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を第6巻まで読み終える。ミルチア・エリアーデ著。ちくま学芸文庫。
エリアーデ本人が書いたのはここまで。「聖アウグスティヌスは結局、マニ教から脱け出せなかった」、という記述がおもしろかった。「アダムの原罪は、セックスによって遺伝する。だから、洗礼を受ける前に死んだ赤ん坊は地獄に堕ちる」、という彼の教説。これには、若い頃の彼が信じたマニ教からの影響が、強く残っているという。
マニ教を代表とするグノーシス派の教え。「人類は悪魔によって創造されたものであり、その本質は悪である。悪はセックスによって遺伝する。そのような人類がひとり残らず死に絶えて、初めてこの世界は救済される・・・・・・等々」。これが、アウグスティヌスを通して現代のキリスト教にまで影響を及ぼしている、という。キリスト教が、人間の肉体的・本能的部分を蔑視するのは、マニ教に由来するのかもしれない。
グノーシス派は、日本人にも無縁ではない。それどころか、セックスレス&少子化が進む現代の日本ほどグノーシス派の教えが花開いた国はない、ように思える。「人間そのもの」よりも、「よい生き方」という理念の方が先行してしまっているのだ。理念に追いつけない人間を増殖させない。これが、一般常識になりつつある。