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連載「人とロボットの秘密 第4章」を読む。
スピノザの「エチカ」からの引用の仕方が、おかしい。いかにも我田引水的だ。彼は、「心よりも先に体が動く」などとは一言も言っていない。それどころか彼は、「人間精神は身体とともに完全には破壊されえずに、その中の永遠なるあるものが残存する」、と書いている。「心身並行説」といっても、この本の大部分は「心」について書かれている。
彼はまた、人間の自由について、次のように言う。感情や衝動のままに行動するのは真の自由ではない。なぜならそれは、感情や衝動に支配されていることになるから。そうではなく、全能の神が人間に授けた理性の命令に従って行動し、感情や衝動をコントロールするのが真の自由だ、と。
このように人間の精神を重視するスピノザを、どうして受動意識仮説を補強するために引用するのだろうか。
引用すべきなのは、夢野久作の「ドグラ・マグラ」だろう。ていうか、この記事を読んだ時に、あまりにも内容が似ているので驚いた。つまり、この小説に出てくる「脳はモノを考えるところにあらず」、「ひとつひとつの細胞が考えている」、「脳は全身から集まってくる情報をいわば交通整理しているだけ」、という学説だ。「記憶は遺伝する」という部分はさすがに引用しない方がいいかもしれないが。