リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

枯れた・・・

2023年02月02日 20時40分12秒 | 日々のこと
枯れたナントカというと、若い人はもう古くなってだめになっているナントカと勘違いする方もいるかもしれませんが、日本語の「枯れた」というのは派手ではないけど時間をかけて洗練されきて、とても安定している、というようなニュアンスのことばです。

演奏の評で「枯れた味わいの演奏だ」と書かれたら、それはなかなかの褒め言葉でしょう。1回くらいは言われたいものです。日本語には枯淡なんてことばもありますよね。こういう美意識はわび、さびに通じる日本文化の一側面だろうと思います。もっとも「枯れた山林」なんてつなげてしまうと、これは多分単に草木が枯れてしまっているということを表すことにすぎないようで。

「枯れた・・・」はテクノロジー関連でもよく用いられることばです。リチウムイオン電池の改良に、枯れた技術を使い成果を上げている、なんて記事を読んだことがあります。なんでも正極側にコバルトを使わず、リチウム(Li)・鉄(Fe)・リン(P)を材料として利用するLFP電池が「枯れた技術」だそうな。

LFP電池はより安価で、発火の危険も少なく、コバルトやニッケルを使わないので材料が安定的に入手できるということらしいです。他にも枯れた技術を使って改良が進んでいるらしいですけど、電池に関する新聞報道はちょっとセンセーショナルに書きすぎる傾向がある様な気がします。私の読んだ記事でも枯れた技術を使って画期的な電池、すなわち軽量、安価、大容量、5分で満充電、安全な電池が出来たわけではなく、大きく進化したように見えても、実際は大仏様の手のひらの上を少し動い程度のものという記事が大半です。