リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

日本でリュートが始まった頃(14)

2023年06月15日 10時09分04秒 | 音楽系
こういった経緯があったので、その気になっていた名古屋でアマチュアのリュート愛好会の結成に迷いがでましたが、リュート愛好者の裾野は広い方がいいだろうと考え結局は結成に協力することにしました。

しかしもとより最初からプロ指向の私と他の愛好家の方たちとは非対称の関係になるのは当然でしたが、なんとなく曖昧なまま結局21世紀の初め頃まで会に在籍しました。今から思うと、酒井氏に相談するまでもなくアマチュアの方達とは距離を取るべきだった思います。その頃リュートを始めていた東京在住のプロの方は、東京の会とはもちろん協力的ではあったでしょうけど皆少し距離を取っていました。

70年代始め頃、「革新指向(政治的な左派の流れ)」「既存体制をブッ壊せ!」といった当時の社会的風潮の上に古楽の普及運動が重なって来ていました。これは多分偶然そうなってしまったのだと思うのですが、(というのも古楽復興運動の嚆矢は20世紀の初め頃でしたから)ギターをやっていてリュートにやってきた方たちの中にはある勘違いをしている方も多かったように思います。

その勘違いの最たるものは自分もプロ奏者と対等に古楽の流れを開拓していくのだという意識です。当人達は多分そういう自覚はなかったかも知れませんが、当時の著名な音楽学者の先生方やプロとして活動している、あるいは活動して行こうとしている方と今式に言えば「タメ」で付き合おうとしていました。