リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

苦労話

2023年06月17日 23時03分23秒 | 音楽系
「完訳とりどりのリュート曲撰」完成記念に苦労話を書いてみましょう。苦労話の押し売りみたいですが。

翻訳は2019年の8月頃から始めました。そしてその翻訳を当ブログにかなりの期間連載し翻訳を終えたのが2020年の1月で約5ヶ月近くかかりました。連載は19年の8月8日が第1回、最終回の第82回が20年の1月31日でした。

そして印刷のための版組を始めたのが昨年2022年の6月頃です。翻訳は半年もかかっていないのに、イラレによるレイアウトの方が倍以上の期間を費やしてしましました。もともとどっかの出版社に売り込もうと思っていたのですが、全て断られたのでしばらく放りっぱなしだったのをせっかくだからと自分で版組をすることにしたのです。

版組の作業はなかなか煩雑で細かいことが多いです。それに本文の訳や注釈を見直しながら進めたものですから余計時間がかかってしまいました。そして当初の方針、タブの部分は割愛または後日出版、というのを改めまるごと翻訳することにしたのでさらに手間がかかりました。

実はタブの部分はちょいちょいとやればすぐ終わるだろうと高をくくっていましたが、それがなんのなんのなかなかのくせ者でした。何せミスプリントが多すぎます。ミスプリントが多いということはこの曲集の何曲かは過去に弾いていましたので知っていたのですが、改めて全て見てみますとその多さに驚かされます。ミスプリントは、タブの段を一段間違えたというかわいらしいものから、もう適当にやってしまったというめちゃくちゃなものまでなかなか多彩です。

それらの全てに註を付けて正しいものを示しました。場合によってはこれが正しいんじゃない?とか例えばこんなのかも?というレベルのものもあります。正解が特定できなかった場合です。ことばで表すと煩雑になる場合は、フォトシでタブの文字をオリジナルのキャラクターをコピーして当時の印刷タブを作った箇所も何カ所かあります。でも昔出版するときチェックしなかったんでしょうかねぇ。それともタブだからばれないからいいやってレベルなんでしょうか。

あと普通の出版物ではやらないのですが、今回は改行による語句の泣き別れを全て手作業で排除しました。これは例えば「わたしは」というフレーズで「わた」で行末に来てしまい次の行で「しは」が来るのが泣き別れ。これを全ての行についてなくしました。まぁこれ、止めとけばよかったのですが、乗りかけた船でついつい全ての文章についてやりました。これも手間がかかった要因のひとつ。

さらにタブの部分は文章は少ないのですが、曲名に出てくる人物のリサーチも行い註を付けました。ChatGPTも使って調べたのですがウラを取るのが手間取りました。何せChatGPTはいろいろ調べてくれるのはいいのですが、結構誤情報も含まれているので鵜呑みにしてはいけません。ですからChatGPTについては参考文献一覧にはあげてありません。

結果的に翻訳より版組の方がはるかに手間がかかったのはこういうことをやっていたからです。もっとも翻訳はたとえ短時間でも毎日やっていたのに対して(連載がありましたから)、版組はさぼっていたこともあったので余計長い期間を要することになったのです。

現在付箋をつけたところの手直し中、表紙のデザインも少し変更しました。来週中に完成で製品版の印刷をする予定です。