リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リュートのテクニックはなぜ必要なのか(1)

2023年06月29日 13時39分46秒 | 音楽系
リュートを弾いているからには少しでも上手くなりたいと思うのは当然で、皆さん技術的な探求に余念がありません。ルネサンス・リュートならいかにフィゲタを弾くか、バロック・リュートならいかにバス弦を弾く親指を使うかなんかがテーマになるでしょう。これはプロもアマも同じ。私の師匠も絶えず技術的なことは探求されていて、レッスンのときフォームが微妙に異なる昔の写真を見せると「これは昔の弾き方だ」なんて仰ることもありました。

ただここではプロとアマは分けて考え、論点をアマの場合のみに絞ってみましょう。レッスンをしていると「フィゲタはどのように指を使ったらいいのですか」とか「バロックのバス弦を弾くテクニックを教えてください」などとよく尋ねられます。ひととおり説明して実演なんかもしてみせるのですが、これだけで掴み切れるのなら誰も苦労しません。

すぐにできないのは当然なのですが、それだからこそ、そういったテクニックの習得にのみ血道をあげる人が大勢います。著名な演奏家のマスタークラスに参加し少しでフィゲタの技術を「盗もう」と目をこらしたり、仲間とテクニック論に熱中したり・・・それはそれで無駄ではないかもしれませんが。

ではそういったテクニックが何のために必要なのかを考えたことがあるでしょうか。