リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

BWV1003のリュート編曲(13)

2024年02月05日 15時57分52秒 | 音楽系

BWV1003の第1楽章Graveは即興的な雰囲気の装飾的フレーズがウネウネと続きます。かなり速い動きのフレーズもあり、リュートで技術的に無理がないよう最適化を行わなければなりません。タブ化されていてもスムーズに弾けないポジションを使ったのでは、単にタブに置き換えただけのものになります。20年くらい前でしたか某氏からいただいたBWV1003のタブはそんな感じでした。指が届かないところもありましたし。やはり何回も弾き込んで最適化をするという作業が必要です。その点ホピーや今村氏が出している楽譜はとてもこなれたポジションと運指が示されています。とても難しいですが、技量を上げ練習を積めば必ずきれいにひけます。どれだけ練習してもスムーズに弾けないタブもありますから要注意。

6小節目の4拍目は次のようにしてみました。この音型はリュートっぽいものではなくどちらかと鍵盤楽器風ですが、弾きやすいのでいけるのではないかと思います。

この部分のバスもオクターブ下げてみました。6小節目3拍目の一番最後の音(譜例では1コースの4フレットのラ)から次の拍の冒頭のシ(実際はトリルの開始音ド)まで音階的に5連符で下るフレーズを入れるととても即興的な感じが出てよろしいのではないでしょうか。このラソファミレはスラーできれいに速くつなぐことができるフレーズです。とてもバロック・リュートに都合がいいフレーズです。ただ7度下がる音程感がなくなるので、ここはそのまま置いておいて、ラに入る音に装飾スレーズを入れた方がいいかもしれません。いずれにせよこのあたりは楽譜に書かず即興的に対応した方がいいと思います。

ヴァイスの曲なんかほとんど全てリュートに都合のいい音型で出来ていますが、編曲ものだとなかなかそうはいきません。でもできるだけ工夫してリュートに都合のいい=無理のないものにしたいところです。とはいうもののなかなかそうも行かないところが出てくるのがつらいところです。