リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

BWV1003のリュート編曲(18)

2024年02月27日 22時20分18秒 | 音楽系

アンダンテの譜面は音の密度も音域もまるでギター譜のような感じです。実際大学に入りたての頃はこの曲をギターでよく弾いたものでした。でも実際には7小節目の3拍目目のようにギターではとても弾きにくいところもありましたが。

前にも書きましたがこの曲に書かれているバスは普段はメロディ中心に演奏する楽器であるヴァイオリンで弾けるように書いてあるもので、これを普段からバスを入れるのが当たり前のリュートで弾くには少し注意が必要です。

ひとつの方法ですが、このバスをリュートでは少し切り気味というかノンレガートで弾き、メロディはレガートで弾くというのが考えられます。実際ヴァイオリンではそのような感じで演奏されています、というか弓で弾く関係上そう弾かざるを得ないわけです。

弾かざるを得ないというと消極的な意味合いに聞こえますが、バッハそういった楽器上の制約を制約としてではなく音楽表現上の個性として作曲レベルで使っているということがとても重要です。

ですからヴァイオリン版の響きを模してリュートでもバスを少し音色が柔らかめになるように弾き、なおかつノンレガートで弾くというのがいいのかなという感じがしています。
バッハはこの曲を鍵盤楽器用に編曲しています。(BWV964)ここではバスはメロディと1オクタ-ブ離れたラインで動いています。このBWV964をチェンバロで弾いた演奏が何点かありますが、確かに楽譜通りに弾いているんですが、低いバスがとてもうるさい感じがします。同じ鍵盤楽器でもアラールがクラヴィコードで弾いているのはうるさく感じません。これはバスの音量や音色をコントロールしているからです。

リュートのバスも音量や音色をコントロールできます。メロディをオリジナルと同じ音程関係で少し短めに弾くか、オリジナルより1オクターブ下にしてよりレガートに弾くか、これが問題です。

私はどう弾くべきか、実はまだ迷っています。(笑)