リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

クラシック音楽は歪んでいる~12の批判的考察~ (光文社新書)

2024年02月11日 12時28分06秒 | 音楽系

新聞で「日本のクラシック音楽は歪んでいる」「誰も知らない検証されてこなかった真実」、というキャッチーなタイトルの本の広告が目に入りました。森本 恭正、クラシック音楽は歪んでいる~12の批判的考察~ (光文社新書)です。

これは面白そうです。確かに日本のクラシック音楽は歪んでいると言えば歪んでいます。ぜひ読んで見たいとアマゾンのサイトを見てみました。最近はこのパターンが多いです。購入するのも紙の本ではなくKindleで読みます。

ポチる前に一応書評を読んでみました。驚くことにえらい強烈な否定的な書評が複数件ありました。一瞬購入をためらいましたが、別の興味も出てきてポチってみました。

Kindleはすぐ読めるのが強みです。いちいち本屋さんに行く必要がありません。ざっと走り読みをしてみましたが、うーむ、書評はかなりあたってますねぇ・・・というか特に音楽史に関するところなんかは全く独自見解のオンパレードで頭がクラクラしてきました。

でも共感できる部分もありました。

批判7誰もが吉田秀和を讃えている、の冒頭

  ふと 思う。 音楽 批評家 とは、 奇妙 な 職業 で ある。 野球 評論家 の ほとんど すべて は、 元 野球 の 超 一流 選手 たち で ある。 ほぼ あらゆる スポーツ の 評論家 が、 かつて の 第一線 プレイヤー だ。 なら ば いったい 音楽 評論家 は 自分 の どんな 能力 を 信じ て 評論 し て いる の だろ う か。 いったい 何 を 根拠 に、 優れ た 実績 を 持つ 指揮者 や 演奏 家 に対して、 テンポ が 速い とか 遅い とか、 音 が 美しく ない とか、 あるいは 逆 に、 壮絶 とか 完璧 な 技巧 とか 世界 最高峰 とか 壮麗 とか 壮大 とか 凄絶 などと、 わけ も なく 興奮 し て 断 を 下し て いる の だろ う。(森本 恭正. 日本のクラシック音楽は歪んでいる~12の批判的考察~ (光文社新書) (pp.136-137). 光文社. Kindle 版. )

まさしくそうです。私なんかは、「オマエなんか何にもわかっとらんやろにエラそうなことゆーて。そこまでゆーんやったらオマエやってみー」なんて下品ないいぐさを心の隅っこで小さく聞こえないように言っていますが。あと音楽評論家の類いは美術評論家もそうですよね。

かつてテレビの番組で某有名美術評論家、美術史家の方が超絶技巧金属細工の置物を評して「よくやるなー・・・」って上目線で他人事みたいにポロっと言ったことがとても印象に残っています。芸術家は命を削る思いで作品に取り組んでいるのに、テレビに出てどっかの大学で教えて売れる本を書いて、その芸術家よりはもうけているとはいい身分です。アンタの仕事は芸術家がいてこそです。

というわけで件の本、いろんな意味でなかなか面白い本です。興味のあるかたは是非ご一読を。ただし鵜呑み厳禁!