(ボリショイサーカスのホームページより。)
私が小学校3年生のとき、ボリショイサーカスが来日した。後楽園球場で公演するというので、見に行く予定日を指折り数えて待っていた。ところがその日に限って熱発し、見に行けなかった。
残念がる私を不憫に思ったか、後日、父親が日本のサーカスを見に連れて行ってくれた。だが、面白くないのだ。その理由を父親は「団員に笑顔がないからだ」と私に語った。
医学生時代、教授に「自分は小さいころサーカスに売られた」という強固な妄想をもっている人がいた。(妄想があっても医学部教授にはなれるのだ。)子どもをさらってきて芸を仕込むといった暗いイメージが、むかしのサーカスにはあった。
現在、サーカスの団員になる人は体育大学出身者が多いらしい。だから、現在のサーカスには「子どもをさらってきて・・」という暗いイメージはないのだが、かと言って明るくもない。体育大学で器械体操をやっていた人たちは、みなオリンピックを目指していたに違いない。オリンピックには出られなかったが、いまサーカスには出られる、というのは私の偏見かもしれないが、必ずしも明るくはないのではないか?
今の日本のサーカスは、みな笑顔である。むかしのように、仏頂面で宙返りやジャグリングをやっていないことが救いである。