(47club より引用。)
昭和44年、私は大学入学のために単身、名古屋におもむきました。生まれて初めての一人暮らしでした。まず、困ったのが食事でした。6畳一間の下宿で、おかずなしでトーストを食べたりしていました。
すぐに胃の調子が悪くなるタチで、いつも食欲がなく丼物一杯が完食できませんでした。そんなとき喫茶店で「小倉トースト」に出会いました。量が少なく、かつ甘党の私にはうってつけの一品でした。好んで食べました。
いま「小倉トースト」は名古屋の悪食の象徴みたいに言われています。でも、若年の私の食生活を彩った大事な食べ物だったのです。こんなに胃が弱くて、医者の激務に耐えられるだろうかと不安でたまらなかった19歳の私でした。
そのころは、いま名古屋飯といわれている「あんかけスパゲティ」や「手羽先」は、まだ影も形もありませんでした。