院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

ムンテラとカウンセリング

2014-07-21 05:18:52 | 医療
 患者やその家族に、医者が治療や経過について簡単に話すことをムンテラと言います。ムント(口)とテラピー(治療)というドイツ語をくっつけた和製ドイツ語です。

 「口先治療」とも言われ、むかしは素人の患者や家族をごまかすような意味あいもありましたが、現在ではインフォームドコンセント(説明による納得)も、ムンテラのうちに入ります。もっとも、今度はインフォームドコンセントという用語さえ、裁判で負けないための医者の保身という意味が含まれるようになってしまいましたが・・。

 分かりやすく外科手術を例にとりますと、術前術語のムンテラはきわめて大切で、精神療法とかカウンセリングと同じレベルにあると、私は思います。

 ムンテラはじつは高度なコミュニケーションで、医者によって巧拙があります。患者の性格、成育歴、家族的背景などを医者が知っていないと、十分なムンテラができません。その上で、外科医の気働きも重要です。

 朝、担当外科医が外来診療の前にちょっと病室を覗いて、一言二言患者と言葉を交わすだけで、たいへん強力なムンテラになることもあります。

 熱心な外科医は、紹介してくれた家庭医への現状報告を行います。電話で2,3分で済むことですが、それだけで家庭医は安心します。家庭医が安心すると、家族が家庭医に接する機会があれば家庭医の気持ちが家族に通じ、ひいては患者にもよい影響が及びます。

 だから、ムンテラは時間の長さや書類の多さよりも、短時間でもよいから行き届いている必要があります。それにより、医者患者間の信頼関係が増します。信頼関係が醸成されると、次のムンテラもうまくいくという好循環が成立します。

 以上のようなわけで、ムンテラは精神療法やカウンセリングに匹敵し、優秀な外科医はとくべつ精神医学を学んでいなくても、それができてしまうことを指摘しておきましょう。