(文明堂のHPより引用。)
最中はあんこを味わわせるお菓子ですが、どら焼きのほうは皮にもっと存在感があります。幼いころ私は最中を好みました。けれども、どら焼きも決して嫌いではありませんでした。
名古屋で学生生活を送っていたころ、名古屋にはどら焼きがないんだなと思いました。似たお菓子に両口屋是清という菓子店の「千なり」がありました。このお菓子は、どら焼きよりも小ぶりで皮が厚く、そのためどら焼きよりあんこが少ない感じがしました。
「千なり」がどら焼きと決定的に違っていたことは、「千なり」のあんこには白あんや紅あんなどがあったことです。両口屋是清は江戸初期から徳川家にお菓子を納めていた老舗ですが、どら焼きに慣れた者からは「千なり」のあんこはもの足りなく感じました。(あんことして認められるのはせいぜい白あんまでで、紅あんとか抹茶あんは、あんことして認めたくありません。)
名古屋では「千なり」をどら焼きと呼ぶことはありません。「千なり」は「千なり」でした。東京では文明堂のどら焼きを(商品名である)「三笠山」と呼ぶ人がいましたが、万葉集も古今集も知らない幼い私でもキザに聴こえました。
※今日、気にとまった短歌
妣(はは)のこと思はざる日はなかりしに娘(こ)の逝きてよりそは薄れゆく (三重紀北)庄司まさ子