院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

内科診療とカウンセリング

2014-07-22 00:45:49 | 医療
 医療の役割は一義的には痛みなどの苦痛を除くことですが、苦痛がない障害の場合、医者(ここでは内科医)のすることはカウンセリングとなります。

 たとえば、大酒家が肝機能障害を起こすとγ-GTPの値が上がることはよく知られています。その場合、医者は節酒や断酒を薦めるだけでは不十分です。その患者がアルコール依存症になるリスクや、なった場合の家族への影響なども考慮して、全体的に考えなくてはなりません。また、その患者が酒に走らないストレス解消法はなんなのか、患者の性格や嗜好に沿って考える必要があります。

(このような指導的なアプローチが可能になるためには、医者には良い意味での「権威」がなくてはなりません。「権威」については後日に述べます。)

 ここでの内科医の役割は、一昨日述べた「遺伝カウンセラー」と同じようなものとなります。控えめに注意深く患者と向き合わなくてはならないでしょう。お酒をやめさせるのが最善の道とはかぎりません。

(技術評論社刊。)

 上の本の著者は内科医ですが、東日本大震災の緊急診療所に派遣されました。そのとき、自転車で転んだおじいさんが受診してきました。おじいさんは酒臭く、「飲んでいますか?」と尋ねると「飲んでるよ」とのことでした。著者はおじいさんがこうむった厄災を考えると、かける言葉がなかったといいます。著者は「患者との控えめな対峙」という言い方をしています。また、「患者の気持ちが分かる」という医者の態度を、分かりっこないと否定しています。