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もの書き、ガムランたたき、人形遣いPの日記

知恩院の鐘の音

2011年10月14日 | 
 学会に滞在していた先週末、どうしても聞きたい音色があった。知恩院の大きな鐘の音である。70トン近くあるこの鐘は、大晦日に放送される「行く年来る年」で中継されるほどの有名な鐘で、大晦日以外にはめったに叩かれることがない。しかし、この10月は法然上人800年大遠忌で、正午に鐘が叩かれるという情報を入手していたのである。
 お昼少し前に行ってみると、意外に観光客は少ない。すでに鐘をつく4,5名の若者がスタンバイしている。それにしても大きな鐘であり、日本三大鐘楼の一つに数えられているという。お坊さんの話によれば、山の一部を切り崩して、鐘楼のある場所で鋳造したのだという。とてもここまで移動できる重さではない気がした。
 正午、一つの目の鐘が鳴らされた。この音をブログに言葉で表現するのはひじょうに難しいのだ。複雑な倍音がものすごい音量で、なんだか鼓膜から脳の奥底まで到達したことで、そこから体全体に伝達された信号により、あらゆる細胞が驚きによって、一瞬その働きを静止してしまったような、そんな感覚である。感動とは少し違う感覚で、そういう感情には表せない音なのだ。なんだろう。思わず「手を合わせてしまう」ような音である。
 何回たたくのだろう?私は五つ目くらいに山を下った。知恩院の山門で耳をすますと、まだ鐘は鳴っている。今から数百年前、今よりはるかに京都の市中が静かだった時代、この鐘の音はいったいどこまで届いたのだろうか?