社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「在宅医療における訪問看護形態の一考察」 倉戸みどり(2002)

2009-08-10 21:18:57 | 看護学
『勇美記念財団 報告書』

1回30分未満や1時間未満といったポピュラーな形態だけではなく、長時間付き添い看護や24時間付き添い看護の実践を通して、「在宅での看取りを支援した」ことの報告。

この長時間付き添い看護等は診療報酬等の枠なのかは分からないが、一提供方法としての在り方を知ることができた。


3事例が報告されているが、いずれも連日の訪問看護を提供している。そしてある事例は、一日中付き添うことが複数日あり、その濃密さに驚いた。
これだけのケアが提供できれば、独居であれ、多くの医療処置が必要な患者であれ、在宅での看取りが可能になるだろうと感じた。
しかし一方で、ここまで介入しなくとも、「家族の力」や「患者の力」を支援(教育)する術はなかったのか?とも感じる。
家族の「いつ亡くなるか分からないから不安。だから看護師さんにずっといてほしい」というニーズに対して、寄り添い続けるのも一方法だが、限られた時間のなかで、不安に傾聴し、「家族だけの時間」を安らかなものにできるように支援するのも一方法であろう。

長時間付き添い等の費用については述べられていなかったが、どの人にも平等に…という観点からすると、この形態でのサービス提供は限界があると感じた。
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「ホスピスにおける遺族ケア」 松島たつ子(2006)

2009-07-06 14:23:54 | 看護学
『家族看護』Vol.04 No.02

神奈川県にあるホスピスで実践をされた看護師による論文。
その理念、筆者が勤務しているホスピスの実践内容、わが国における今後の課題…を概観している。
遺族からの意見を取り入れつつ、様々な試みを思考錯誤で行っている様子が分かり、遺族ケアの奥深さ…難しさを痛感した。

引用
・ホスピス緩和ケア病棟における遺族ケアには標準化された方法はなく、各施設において独自の判断と工夫によって実施されているのが現状である(筆者も参考文献から引用している)
・今後の課題→ホスピス緩和ケア病棟における遺族ケアプログラムについては、時間や費用の問題、担当者の不足とともに、病棟でどこまで遺族ケアを行うのが適切かなど…
・入院中の家族の様子などからフォローが必要と思われる場合にはソーシャルワーカーが電話をする場合もあるが、1~2回で終了となっている。
・(遺族は「よい治療を受けさせてあげた」と思えれば、悲しみがいくらかは和らぐ…という前述の後)よいケアを受けられたと思えるように、療養生活への配慮や苦痛の緩和など、患者のケアをしっかりと行うことが基本となる。


 遺族ケアの期間の設定、役割分担、費用…現場スタッフがやりがいを感じ、必要性を感じていても、それを持続させるには、「思い」だけでは限界がある。
研究助成のなかで、患者会の運営や一般向けの講習会(緩和ケア/ホスピスケア普及のためのもの)等を推奨するものはあるが、それは一定期間のもののみで、以降は組織の持ち出しになる。
診療報酬に載せると、かえって対象者が限定されてしまったり、「加算を取ろう」と躍起にあり、「望まない人への押し売りの支援」も生まれてしまうかもしれない。どうすれば遺族ケアを推進し、定着させることができるのか…とても難しい

筆者は「家族の悲嘆のケアにおいて死別前から予防的にかかわる…」と表現している。悲嘆は「家族の死」から始まるものではないと後述しているところをみると、この「予防」の表現に違和感を感じる。
「継続的に」「持続的に」というほうが、私には理解しやすい。
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「訪問看護ステーションにおける遺族ケア」 秋山正子(2006)

2009-06-30 14:21:14 | 看護学
『家族看護』vol.04 No.02

筆者の体験をもとに、訪問看護ステーションにおける遺族ケアの実際を紹介している。

・(遺族ケアは一律で行えるものではなく、個々の家族のニーズによって変化させる必要がある…という前提を踏まえて)「担当した看護師を中心にデスカンファレンス(亡くなった方のケースカンファレンス)を開き、亡くなる過程の振り返りを行うと同時に、遺族ケア(グリーフケア)の計画を立てる」
・「もっともケアを必要としている人は誰か、そしてそのケアの頻度はどのくらいがよいのか、最長を1年と考え、まずは亡くなって1カ月から四十九日前後までのところで必ず1回は訪問できるよう計画していく」
・「ケアを受ける側ばかりにいると、特には自己決定能力が低下し、すべての判断を人の頼ろうとしたりすることもある。死別から間がなく、悲嘆が大き過ぎる場合は、意思決定を代行せざる得なくても、セルフケア能力を取り戻せるような関わり方が遺族ケアの中で求められる」


本論文でも、訪問看護ステーションは、遺族ケアによる報酬が得られないことが指摘されていた。そのため現時点での有効策としては、遺族ケアを行っているボランティア団体の紹介や、受診が必要と見込まれる場合は、精神科への受診支援を行う…などが挙げられていた。

「大切な人」が亡くなってから、「はい、では次はこちらで」と新しい機関と関係を持つのは、しんどうであろう。理想としては、患者本人のケアを行った機関のスタッフが継続して支援する。もしくは、ボランティア団体等と協働し、患者本人を「看取る体制」に入っている段階からかかわってもらい、患者本人が亡くなったらボランティア団体がメインとなって支援する…であると考える。
医療技術が発達し、「生」に焦点がいきがちではあるが、その裏(隣?)に「死」があることを忘れてはならない。そして、それにまつわる支援の在り方も、もっともっと重んじられるべきであろう。
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「地域に潜在する遺族ケアのニーズ」 橋本眞紀(2006)

2009-06-29 13:51:50 | 看護学
『家族看護』Vol.04 No.02

 わが国における遺族ケアは、いまだにホスピス等の限られた施設の中での取り組みであることがほとんどである。地域には、様々な状況で「大切な人」を亡くした人が生活を営んでいるが、そのような人への支援はどの程度行われているのか。…といったことを、具体的な事例を提示しながら、遺族ケアの必要性を説いている。


引用
・(訪問看護師もグリーフケアに積極的に取り組むべきであるが)訪問看護の契約は、基本的にその患者の生きている間のケアに対するものであり、遺族ケアまでは業務として承認されているわけではない。
・(配偶者を失った高齢者の事例を通しての筆者の所見→)後期高齢者では心身ともにその危機をに対処できる力がなくなっているといえる。
・人生最大の危機とも言える配偶者の死という現実に遭遇した時に、間髪入れずにサポート体制が取れるか否かは、その後の生活再建に大きな影響を及ぼすと言えよう。
・(病院内でも機能分化が進み、病状によって院内でのベット移動/病棟移動が一般的となり、担当医療者がその都度変わっていくことについて)…発病から入院・外来・再発・終末期・遺族ケアに至る医療の節々に、家族をも含めて一貫して寄り添ってくれる看護の存在を求めているように思えてならない。


 一般病院で入院をしていた「大切な人」が亡くなった場合、入院先の医療機関から遺族ケアを受けるられることはほとんどないだろう。訪問診療/訪問看護では、定期的に「茶話会」を開き、もしくは手紙等を送ることで、「何かあったら、あなたのサポートは私たちが行いますよ」と知らせているところもあるが、初七日を過ぎたころにお焼香に伺うことで、家族とのつながりが消えてしまうことが多いのではないだろうか。
本当にサポートが必要なのは、「大切な人」を失い、その人がいない生活を紡いでいく過程であり、それは長期間に及ぶものであろう。
そのシステムをどのように作り上げていくのか。個々の医療機関であっても、地域の保健センターであっても、包括支援センターであっても、それはどこでも構わない。その人がその人らしく、もう一歩を踏み出せる力をサポートしていく取り組みを、業務のひとつとして位置付けていくべきであろう。

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求められる退院調整看護師の活躍と退院支援システムの確立 鄭佳紅・上泉和子(2008)

2008-12-14 11:27:04 | 看護学
『看護』2008.9

「領域争いではなく、専門性を活かした役割分担を」と頭ではわかっているものの、やはり気になる看護師の存在。
退院調整を看護師が担うことの現状を知りたいと、この論文を読んだ。

引用
「(患者・家族は、どこにいても切れ目のないケアを受けられるべきであり、)そのためには連携・調整・仲介等の役割を果たすサービス機能が期待されている。退院調整看護師は、その機能を看護師の立場で担うものであり…」


退院調整看護師は、病棟看護師との役割を分担する存在なのか、はたまた病院内においてその専門性を確立させるべき存在なのか…。

診療報酬改定において、後期高齢者の退院援助に際し、「退院援助を専門とする社会福祉士もしくは看護師…」の評価が加えられた。
「病院と地域の窓口」「心理社会的サポート」を前面に出し、いかにしてその専門性を組織で確立させようか、と頑張っていた社会福祉士(ソーシャルワ-カー)にとって、この文面は納得のいくものであったのだろうか。
10年くらい前、病院内でのソーシャルワーカーの立場を明確にさせようと、保健医療の領域でのソーシャルワーク分野では、「退院援助」を表した論文が多く発表されていたのを思い出した。
当時から考えると、法的にその存在の一部が認められたとなるのだろう。
今後、看護師との役割分担がどのようになっていくのか、どうあるべきなのか、考えさせられることが多い。

余談として
地域から病院にアクセスする立場からすれば、病院には「地域連携室」「医療福祉相談室」「看護相談室」…と窓口が多く、その分担は外から分かりにくい。
「訪問看護師指示書」は書類手配に関するものだから、地域連携室だろうと問い合わせをしても、「看護業務に関わるものなので、看護相談室が窓口です」と言われた。そして医師が書く情報提供書は、地域連携室が窓口になるらしい。
さらに、入院中の相談は「医療福祉相談室」がメインとなり、退院後や外来患者は「看護相談室」がメインになるところもあった。

組織体系を整理することで、職員の業務は円滑になるのかもしれない。しかし外部の人間にとって、それはどうなのか?その体系の在り方を、今一度振り返ることも必要だと考える。
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家に居たい患者さんに看護ができること 角田直枝(2006)

2008-09-13 21:56:39 | 看護学
『緩和ケア』 Vol.16 No.3 MAY 2006
 
主に、在宅医療における看護教育のあり方を検討。
病棟看護師にむけての、エール?檄?という印象を受けた。

1996年に看護教育のカリキュラムが改正され、初めて「在宅看護論」が設定されたとのこと。
引用
「病院の看護師と訪問看護師が研修や学会などで同席する機会も少ない。病院と在宅で働く看護師の協働が立ち遅れてきた結果、看護師の多くが在宅療養を知らずに退院指導や退院調整を行っているのが現状である」


「在宅看護論」が割と新しい科目であることに驚いた。
しかし大学での保健医療ソーシャルワーク教育は、もっと遅れていると思う。
特に医療福祉に関しては、医療機関が社会福祉士の実習機関として認められたのはここ数年(3年くらい?!)のこと。さらに、保健医療でマイナーな位置にある「在宅医療」については、触れられる機会が少ないのではないかと思う。
職能団体においてはどうだろうか?やはり「在宅医療」は、「送り出す先」であり、「ソーシャルワーカーとして活動する場所」ではないようだ。実際に、冠がついて開かれている講座等は、「退院調整」ありきのものであることが多い。
「在宅」をフィールドとして活動するソーシャルワーカーは、どうやって成長していけばいいのだろうか…。

論文のなかで、地域の情報を十分に把握できない病棟看護師は、早いうちから地域(在宅)の看護師に情報を得よう!とあった。
病院であれ地域(在宅)であれ、そういったところでソーシャルワーカーを活用してもらいたいなぁ…。
他職種への浸透が、まだまだであると痛感した
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在宅での看取りのケア 家族支援を中心に  宮崎和加子 (日本看護協会出版会)2006

2008-04-15 14:52:24 | 看護学
訪問看護師の在宅ターミナルの役割を、事例を通して具体的に紹介。それ以外にも、在宅ターミナルの概要も整理されている。


昨日のブログで、緩和ケアにおけるソーシャルワーカーの役割で「コーディネート」も重要なもののひとつであることが、頭の中で整理できた。でも、ソーシャルワーカーが存在しない医療チームも多くあるわけで、そのチームのコーディネーターはどの職種なのか?という素朴な疑問が残った。在宅においては、医療的なニーズが高ければ、介護保険対象者であっても、訪問看護師がコーディネーターの役割を果たすこともあるだろう…と考え、この文献を読んだ。
結果…やはり、訪問看護師の役割として「コーディネーター」があることが記され(P.96)、在宅ターミナルケアの中心的な役割を担う(P.107)とも記されている。この文献では、「ソーシャルワーカー」は「相談員」の一員としてまとめられ、チームの一員というよりも、「地域の相談窓口」であったり、「訪問看護を依頼してくる窓口」(P.106)として記されている。


・在宅ターミナルケアでのソーシャルワーカーの「コーディネーター」の役割は、チーム全体のものではなく、あくまで所属機関にとどまるものなのか?
・これまでの文献を通して、ターミナルケア(緩和ケアとイコールでよいのかは、未だ模索中…)+在宅ケア+在宅医療でのソーシャルワーカーの役割には、「人権擁護」「コーディネーター」」というキーワードが浮上…自身の頭の整理
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