社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「独居在宅ケア」中山康子(2008)『緩和医療学』 Vol.10 No.4

2009-11-04 07:49:13 | 看護学
宮城県内のNPO法人代表の方の論文。
在宅独居での看取りについて、自身の経験をもとに紹介。
4ページと分量的には少ない論文ではあるが、適切で分かりやすい。
独居といってもひとくくりではなく、様々なケース(パターン)があることをあらためて感じた。

引用
・『本人のこれまでの生き方のなかでさまざまな事情があり、だれにも協力が得られないし、得たくない人もいる。このような場合には、本人に、社会に生きる住民の1人としてしなければならない最低限のことを明確に提示する。「1人で死ぬ。誰にも構わないで欲しい」という人もいるが、死後のことも自分で準備しなければ、社会に人に迷惑をかけることをわかってもらい、準備すべきことをして、生き抜くように支援する』
・「訪問介護士や医療従事者が、民生委員やインフォーマルサポートとチームになってケア体制をつくることができれば、独居の場合でも自宅で看取ることは不可能ではない」


「独居」「身寄りなし」というキーワードにぶつかると、「在宅困難」という答えを出しがちである。
しかし、その人がそれまでの人生のなかで作り上げてきた人間関係を見つめ、そして活用できれば、たとえ独居であっても、自宅での看取りは可能であるということに共感した。
また関わりを拒否する人に対しては、「世間との関わりを拒否すること」と「世間に迷惑をかけること」は別物であり、それをきちんと知らせるべきである…という筆者の意見に、「なるほど!!」と深くうなづかされた。
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「高齢者の在宅ターミナルケアと訪問看護サービスの現状-福井県の訪問看護事業所調査から-

2009-10-02 12:56:02 | 看護学
安岡文子・春見静子『福井県立大学論集』第27号 2006.2

高齢者の在宅ターミナルケアの現状を、訪問看護ステーションに対する郵送調査で把握している。
訪問看護という事業について、そしてそれを取り巻く施策等についても触れられており、基礎知識を整理するために活用できると感じた。

引用
・ターミナルケアを実施したことがなく、また実施予定もない事業所の理由⇒人材不足と社会的支援不足、採算が合わない
・単独型訪問看護ステーションよりも、病院が併設している訪問看護ステーションのほうが、ターミナルケアを実施しやすい⇒急変時の入院先が確保しやすいから


福井県という地域限定の調査ではあるが、実施上の悩みや取り組みが円滑に行えない理由については、地域差はないのではないかと感じた。

調査結果として、高齢者の在宅ターミナルケアが困難な要因として、「福祉関係者の技術不足」があった。高齢者や家族を支える、ショートステイやデイサービスなどは別の項目で論じられているため、おそらくこれは、福祉従事者のみに限定しているのだと思う。しかし、詳細がなく、何がどう技術不足なのかが分からず、改善をしめす論述も見受けられない。
一方的な批判を受けているようで、少し残念だった。
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「Ⅲ.緩和ケアの調査・研究 2.緩和ケアの質評価・実態調査」 宮下光令(2009)

2009-09-25 15:33:31 | 看護学
『ホスピス・緩和ケア白書 2009』

筆者が取り組んでいる研究活動、ならびに、日本におけるホスピス・緩和ケアに関する研究動向を概観。

数の把握を目的とした実態調査にとどまらず、従事者の自己評価尺度の開発や、緩和ケアの質を評価するための尺度が紹介されており、とても読み応えがある。

「質の評価=何を求められ、整備が必要か?」という点から見れば、実践者たちの指標にもなりうる。


調査方法は多様である…ということを実感させられた。患者対象、遺族対象、従事者対象。そしてその結果から何を生み出し、それは社会にどのように貢献すうるのか…。きっと、このような視点を持ち続けていなければ、研究の意味は皆無であろう。




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「在宅ターミナルケアを支える訪問看護実践の一考察-事例に見られる在宅ターミナルケアの諸相と看護-

2009-09-11 21:34:07 | 看護学
西浦郁恵,能川ケイ,服部素子,井田通子『神戸市看護大学短期大学部紀要』第23号 2004.3

*諸相…いろいろのすがた、様子(「広辞苑」より)

1事例について、じっくりと経過を整理、分析し、訪問看護の関わりかたを考察。自身の実践は、理論に即していたことを結論としてまとめている。

「援助者として心にとめておかねばならない大切なことは、どんなに頑張っても決して苦しんでいる療養者と家族の立場に立てないことである」
 ⇒「寄り添いたい」「状況を知りたい/声を聞きたい」と思うことが大切で、容易に「理解している」と勘違いしないことこそが、援助の根本にあるべきであろう。


研究期間は平成15年6月~12月であるとのこと。おそらくこういった1事例1事例の実践と研究の積み重ねが、現在の在宅ターミナルケア及び訪問看護の実践を作り上げたのだと思う。
いまでこそ、その結論に「目新しさ」を感じない論文となっているが、当時はとても先駆的で、試行錯誤を繰り返す実践者たちの指標になっていたのだと思う。
「訪問看護って何だろう」と悩む看護学生さんや、「看護師さんの役割って何だろう」と感じているコメディカルのスタッフに、答えを導いてくれる分かりやすい論文であると感じた。



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「在宅ターミナルケアに関する研究(その2)‐訪問看護ステーションにおける取り組みの現状と課題-」

2009-08-31 13:12:49 | 看護学
大野かおり、能川ケイ、西浦郁絵ら 『神戸市看護大学短期大学部紀要 第22号 2003.3』

大阪府、京都府、兵庫県の訪問看護ステーションにおける在宅ターミナルケアへの取り組みについて、郵送による半構造的自計式調査を実施。

結果として…
・約8割の訪問看護ステーションで在宅死の、看取りの経験がある
・亡くなった方の43%がガンであった
・最も多いステーションで、年間18人がガンで死亡している
・約5割の訪問看護ステーションが、「在宅ターミナルケアの提供」をセールスポイントとしてあげている
・33%がチームでの実践ができていないと回答している

「対象者のQOL向上を目指した看護には、症状コントロールは重要な課題であり、医師との連携が十分に行われてこそQOLの向上につながる」


少し古い論文ではあるが、訪問看護ステーションサイドからみた「在宅ホスピスの現状」を、よく知ることができた。

「チーム」はステーション内を指すものなのか?他機関とのものを指すものなのか?この論文での「チーム」の定義があいまいなのが残念。
「連携」が対象者のQOLを高めるために必須のものであるならば、ここの議論をもう少し深くしていく必要があるだろう。
「ステーション&医師」「ステーション&居宅」「ステーション&ヘルパーステーション」・・・このつながりの現状はどういう力動になっているのか、興味深く感じた。
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「がん患者の家族に起きている現象と家族ケアのあり方」 柳原清子(2008)

2009-08-28 14:05:31 | 看護学
『家族看護』Vol.06 No.02

いわゆる「がん家族」に焦点を当て、その立ち位置、言動が表わすこと、援助者からのとらえ方(理解するための手がかり)等が述べられている。
家族は「第二の患者」なのか?という問いから、「患者であるなら病気を有しているのか、否か…」という追及は、とても興味深い。

引用
・「家族は第二の患者」という表現は、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)の領域から出てきたものである。
・「医療者から不可解に見える家族の言動は、実は大きなストレス下におかれた時の反応であり、(中略)家族の正常な反応なのである」


「家族の意思決定と生活の変化」を時系列で表にまとめ、説明している箇所がある。
そのなかに、「日常(生活)」「非日常(医療)」という表現があり、ターミナル期になればなるほど、「非日常(医療)」が占める部分が多くなる…となっている。

「医療=非日常」という意味なのか?
この表現が、「病院死はその人らしさを出しにくい、非日常的な空間」と同様の意味の範疇であれば、これはその通りであると思う。
しかし一方で、例えば先天性の疾患があり、常に医療と密接な間柄にいる人にとっては、この表現はとても酷なのではないかと感じた。
「病院での死が多くなり、死が日常の中にない」ということも言われている。
「日常」「非日常」・・・この表現は、とても分かりやすいようでいて、実は難しい表現であると痛感した。



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『「在宅療養」するがん患者と家族へのケア』本千春(2006)

2009-08-26 15:50:06 | 看護学
「家族看護」Vol.06 No.02

がん患者と家族への支援について、「在宅」という場に焦点を絞り、看護師の役割等を絡めて論じている。
在宅(医療)の特徴、援助者が持つべき視点、具体的なケアの実際等を細かく整理している。
各項目ごとについては分かりやすい反面、分け過ぎたために論文全体にまとまりがない印象も受けた。


・患者にとっての「家族」「重要他者」は誰を示すのか。その関係性を把握しておく必要がある。
・「在宅療養での患者と家族への支援」を時間軸に沿って表にまとめている。そのなかで、「退院1週間前」では、訪問看護ステーションの選別と往診医の選択がある。
⇒症状の経過と病院の機能にもよるが、「1週間前」には合同カンファを済ませていたほうが、各々の退院に向けての準備がスムーズではないか?と感じた。
・「在宅での今後の課題」について、制度対象外患者への対応とソーシャルワーク活動の不足が挙げられていた。
⇒看護サイドからも問題点として挙げられていることに、その重要さを再認識した
・同じく今後の課題について、介護のマンパワー不足と質の低下があった。
⇒質の低下については詳細な例がない。なにか現場で感じられたことがあるのだと思うが、この文面で終わると誤解を招くのではないかと感じた。


「誰が、何に困っていて、どのような手助けを希望しているのか、各々の役割で可能な範囲は何かなど問題の根幹を見据えた意図的な介入が必要」…この一文を読んだ時に、ここにSWの役割があると感じた。
直接的な介入が定期的に発生しにくいSWだからこそ、客観的に全体を見渡すことが可能であろう。患者家族と医療職のバランスを的確にとらえ、各々が…お互いがスムーズにコミュニケーションがとれるような働きかけができれば、SWの専門性の理解も、より一層得られるであろう。


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「日本の在宅ホスピスケア;アメリカの実践から学べるか」 高波澄子、竹生礼子(2004)

2009-08-23 16:21:26 | 看護学
『ホスピスケアと在宅ケア』Vo.12,No.3

アメリカにおける在宅ホスピスケアについて、サービス提供の仕組み(保険や対象者の概要など)と実践について紹介。これを踏まえ、日本に応用できないか?といくつかの案を提示している。しかし、提案した後に「どれも難しそうである」と消極的に締められている。

<アメリカでの実践>
・在宅療養者のみならず、ナーシングホームやケアハウスに入居している高齢者もホズピスケアの対象となる(費用面に関しても同様の扱い…ということ)。そのため、施設スタッフを指導し教育することもホスピスの役割である。
・看護師がケースマネージャーとして役割を担いチームの最も中心的な存在である。
・医師と看護師との連携について…あらかじめ、医師と看護師間に当該患者の苦痛緩和・症状管理に関するガイドラインを作成しておき、看護師はそのガイドラインの範囲内で薬剤等を調整していく。
・看護師がフィジカルなケアを中心に行い、SWは、情緒的・心理社会的・経済的な、そしてスピリチュアルな側面のアセスメントをしてニーズに応じたケアを提供する。


日本への応用としてチームケアでの取り組みや、報酬加算、事業の新設等が挙げられていた。
「ソーシャルワーカーと看護師との効果的な連携は、末期患者のQOLに不可欠であろう」と述べる一方で、日本への応用としては「当面は看護師が代行することになろうか」とあった。
看護職による論文であるため、SWについての言及が十分になかったのが残念だった。


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「地域緩和ケアネットワークの現状と課題」市橋正子(2008)

2009-08-21 15:41:18 | 看護学
副題:[神戸市]訪問看護と療養通所介護を結ぶ地域緩和ケア

認定看護師による論文。
筆者が勤務している組織は、訪問看護と療養通所介護から成り立つ「地域緩和ケアセンター」。
ここでは、看護実習生の受け入れや大学の研究者と共同研究を行うことで、臨床としての機能のみならず、人材育成・研究の場としての機能も果たしている様子。

ガン患者は、何らかの精神症状を有することが少なくないが、在宅ケアの場では精神科医が少ない。ということを踏まえて…「精神症状や精神疾患を有するがん療養者の精神医学的評価と治療やマネジメントを行う精神科医の、地域緩和ケアネットワークの参画を心待ちにしている」


療養通所介護事業を、空間的にも機能としても在宅緩和ケアネットワークの「拠点」としているとのこと。

慢性疾患患者のサポート体制を「在宅緩和ケアの支援体制」、在宅緩和ケア対象者(おそらくガン末期の患者)のサポート体制を「在宅緩和ケアネットワーク」と整理して論じている。
疾患でその判別をするのか?支援体制はネットワーク機能も含むのではないか?…と少し疑問が残る箇所もあった。

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「訪問看護ステーションにおける在宅ホスピスケアの実践と課題」佐藤夏織(2006)

2009-08-19 21:24:56 | 看護学
『死の臨床』Vol.29 No.1

「在宅医療=訪問診療」と考えがちだが、訪問看護や訪問リハビリテーションなども広義の在宅医療サービスに含まれる。
そのなかで、ホスピスはどのようにとらえられ、実践されているのかを知るために、本論文を手にした。

筆者は、東京都内の訪問看護ステーションに勤務する看護師。対象患者は、同一法人内の在宅療養支援診療所が主治医となっている患者が多い様子。

実践内容を丁寧に紹介しており、医療従事者以外にも分かりやすい。
論文テーマが「~実践と課題」とあるが、「課題」について十分追求していない点が、すこし残念だった。

引用
「在宅ホスピスケアを開始し亡くなるまで、ケアの展開は受け持ち看護師が中心である」
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