社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「低所得高齢者の生活と尊厳軽視の実態 死にゆきかたを選べない人びと」 大友芳恵

2014-08-04 06:29:38 | 社会福祉学
法律文化社(2013)

所得は、その人の晩年の過ごし方に影響を与える。それは医療や介護サービスの受け方だけではなく、余暇活動や他者との交際等にも影響が及ぶ。これらを量的、質的調査を踏まえて丁寧に分析している。

引用
・食費のやりくり、生活費のやりくりは、年間収入100万円未満の高齢者に顕著にあらわれている。
・切りつめたくとも、なかなか切りつめにくいとの回答が多く聞かれた費目は交際費である。
・(年間収入)150万円が「切りつめるか」「切りつめはしない」かの分岐点となっている。
・(インタビュー調査による語りより)「医療が充実したことで逆に苦しみながら長生きをしているようで苦しい」「切り詰めた生活のなかで、ひとりで暮らしていくという無力感や孤独感とどう向き合っていくべきなのか…これからの大きな課題だと思うよ」
・(年間収入)100万円未満群では民生委員とのかかわりがほとんどみられない高齢者が多いが、200万円未満群では親族や民生委員、近隣とのつながりがみられる。
・低所得の高齢者からは「俺は自分の墓もなにもいらん。川か山にでもまいてくれればいいや」や「後は死ぬのを待つだけ」といった語りが聞かれた。この語りに見られるように、死にゆきかたに多くを望まない姿は禁欲的でもあるが、受動的な忍耐を伴う自尊心が失われていく感情とも思える。


 所得が低いと、人との繋がりを維持しにくくなり、そして生きていくためのサービスも受けにくくなる。
 昔々は、お金がなくとも地縁があり、お互い様の気持ちで過ごしてきたことも多いだろう。
 インタビュー調査の語りは、ひとつひとつが重く、そして自分の今後の生活についても、考えさせられた。


低所得高齢者の生活と尊厳軽視の実態: 死にゆきかたをえらべない人びと
クリエーター情報なし
法律文化社
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