『沖縄県立看護大学紀要第23号』
終末期がん患者の看取りを経験した看護師を対象に、インタビュー調査を実施。沖縄独自の文化的特性を取り入れた看取り支援について、考察を深めている。死を取り巻くことについて、地域ごとの特性があることをあらためて知らされた。また、インタビュー解答には具体的な様式が紹介されており、大変興味深い。
引用
・沖縄では、病院で患者が亡くなると身体を離れたマブイ(霊魂)が、亡くなった病室に残り、成仏できないと 信じられている。民間信仰において、人が自分の家以外の場所で亡くなると、亡くなった人のマブイが迷い、地縛霊となると信じられている。そのため、病院で患者が亡くなると、遺族はユタと呼ばれる霊能者 ( シャーマン)に依頼し、そのユタと共に病院や患者が亡くなった病室等で患者のマブイをあの世に導くヌジファという儀式を行なうことが少なくない(参考文献からの引用として、紹介されている)。
・(研究結果より)看護師は終末期がん患者が入院中および死亡退院後も、亡くなった患者の家族が執り行う死の風習としてのヌジファを容認しており、それが遺族へのグリーフケアにつながるとの認識を持っていることが明らかになった。
地域によって弔いの方法は異なり、その文化が根強く残っていることに感銘を受けた。そしてその文化を肯定的にとらえ、ケアの一環として受け入れ、実施している現場があることを知り、たとえ亡くなった場所が医療機関であっても、「死」が生活のなかにあるのだという、温かみのようなものを感じた。