保健所に勤務する精神保健福祉士さんによる事例紹介。「精神疾患をもつ困った人」と捉えられがちな人たちへの関わりを丁寧に紹介している。
引用
・精神疾患が疑われる場合、「まずは受診」と多くの人は考えます。でも、受診を目的に関わろうとした場合、こちらが決めた目的に本人を従わせたい気持ちが強くなり、本人に拒否されたらより強い説得を試みようとします。(中略)大事なことは受診ではなく、関係性。関係性を築くことができなければ、受診に限らず、他のことも話すことができません。逆を言えば、関係性を築くことができれば、他の話であっても本人との間ですることができます。
・私たちは一人では生きておらず、何らかのつながりを得ながら、社会生活を送っています。何を問題として捉えるのか?それを問題として捉えた人の声が大きければ大きいほど、そのことに焦点が当てられ大きな問題として捉えられてしまう。でも、本当に問題なのかと見方を変えてみると、問題は問題ではなくなる。大事なことは問題に見られてしまう行動を取ってしまう、取らざるをえない本人の理由。
つい最近、区役所の精神保健福祉士の仕事はなんぞや?!と怒り半分、あきらめ半分の事例に遭遇したこともあり、本書での実践内容は「うますぎる。すごすぎる」と感じた。決してキレイごとでは済まない実践であろうから、苦労や負担ははかりしれない。私が遭遇した教科書的、事務的な対応しかできない実践者がいる地域と、周りを上手に巻き込みながら一緒に困りごとに取り組んでくれる実践者がいる地域。支援にも大きな地域格差があるのだと、痛感してしまう。それは首長の方針によるものか?実践者たちの自己研鑽の証によるものか?…
なにであれ、生きづらさを抱えている人が、息をしやすい地域が増えて欲しいと切に願う。