社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「愛」なき国  NHKスペシャル取材班&佐々木とく子(2008)阪急コミュニケーションズ

2009-01-14 22:40:49 | その他
介護に携わる人材不足問題に焦点をあて、その大きな原因の一つである、介護保険のカラクリについて説明。また、人材不足解消のために海外からの労働者を受け入れることになった経過と、現状について触れている。

「書く」ことの専門であるライターさんが文章をつづっているため、とても読みやすく、説明も簡潔で分かりやすい。

・居宅や施設で展開される「介護業務」に対する報酬は、介護保険法の下、介護報酬によって一定額が決められているため、人材確保の重要ポイントである「人件費」の改善ができない現状がある。
・特別養護老人ホーム等は、虐待を受けた高齢者の緊急入所を請け負う。このような、行政的側面を持つセーフティーネットの機能を有していても、ベットが空いているとその分の収入は見込めない仕組みになっている。⇒ベットを空けておくことで、施設側の収益が下がるため、「常に満床」にしている施設がほとんどである。
・介護業務は、「生産性」がないとみなされる職種(職業)である。


読めば読むほど、なぜ介護業務がこれほどまでに見下されるのか…と悲しくなる。
介護は、主に女性が担ってきた「家事労働」の一環であるとみなされてきた側面もある。それゆえに、「専門性」であったり「プロとしての評価」が立ち遅れているのだろう。
訪問診療や訪問看護は、「在宅での生活を長く維持できるためのもの」と言われているが、訪問介護は「在宅生活そのものを作る基盤」である。生活基盤がない以上、訪問系の医療サービスは効果的に機能しない。それは自身の経験から、実感している。食事も摂れない生活環境の中で、医師が治療を行っても何の効果も得ない…そういうことである。

「誰にでもできる仕事」であれば、人材不足に悩む構造は生まれない。福祉専門職への認識を高めるためには、実践を形にし、「専門職」としての位置づけを確固たるものにできるよう、今以上に奮闘しなければならない…ということなのだろう。
大変な事態だなぁ

実践を言語化する方法について(P.266 宅老所の取り組み)
一人の利用者のエピソードを、「当事者」「家族」「地域」の3つに分解し、それぞれの事実と、それに対する考察を記入する。

一利用者の援助経過の記録にとどまらず、「考察」に注目することで、「介護職」の専門性はなんたるや…のエビデンスになる。






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