社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「大都市における高齢者の見守られ意向と見守られたい相手」辻村優希、佐伯和子、青柳道子(2017)『日本公衆衛生看護学会誌』

2024-12-08 15:00:02 | 看護学

大都市に住む高齢者の見守られ意向と見守られたい相手の関連要因について、質問紙調査を実施し、明らかにしている。

調査結果が分かりやすく分析されており、専門職でなくとも読みやすく、理解しやすい。

 

引用

・見守られたい相手は複数回答で、「近隣住民」が179 人(50.0%)、「町内会やボランティア」が 140 人( 39.1% )、「介 護や保健医療の専門

職」 が 200 人(55.9%)、「生活支援サービス」が 24 人(6.7%)、「機器によるシステム」が 81 人(22.6%)であった。

・本研究において、74.0%の高齢者が現在もしくは将来、または時期はわからないが見守りを受けたいと考えていた。特に一人暮らしの人が見守

りを受けたいと思っていた。

・本研究において、見守られたくない人も 26.0%いた。見守りを受けたくない人は同じ町内の人との交流が少なく、他者から干渉されることを心

配に思っていた。

・高齢者が見守りを希望する相手は、近隣住民および町内会やボランティアの地域住民、生活支援サービスや機器によるシステム等の民間企業、

介護や保健医療の専門職の大きく 3 つに傾向が分かれた。

・地域住民に見守られたい人は、安心感の獲得と他者とのつながりを期待していた。また地域住民から見守られたい人は、自身のことを気にかけ

てもらうために意図的に外出していた。

 

見守り体制が整備され、早期発見が実現できた後でも課題はある。

先日、体験した事例である。集合住宅に備えつけてある緊急コールに、「トイレの便座から立ち上がれない」と本人から発報があり、救急隊と住

宅管理センターの職員が駆け付けた。数時間座りこんでおり脱水症状が疑われたが、「もう大丈夫。病院には行かない」という強い意思を受け、

遠方に住む家族と管轄の地域包括支援センターに電話で状況説明をし、解散となった。しかしその後も室内で転倒をしていたが、その時は緊急

コールボタンが手元になく、以降2日間今度は台所で転倒したままの状態であった。「早期発見」はできたが、その後の安否確認が十分にできて

いなったが為に起こしてしまった事態である。

本人の意思は尊重されるべきものではあるが、体調が万全ではない高齢者に対しては、強制的な救急搬送も時には必要であり、それを拒んだ場合

は、少なくともその後24時間は二度三度の安否確認が必要である。それをどのタイミングで、誰が行うのか、その場を離れる時に計画をし、共有

するべきであった。点と点の支援ではなく、線での繋がりを作らない限り、見守り体制は効果を発揮しないと大いに反省をしている。

 

見守り体制を望む住民に対し、専門家はどのように応えていくべきか。本論文を読み今一度、考えさせられた。

 

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「地域包括ケアシステムの構築における課題と進捗状況の検討-地域包括支援センターの全国調査を通して―」河野高志(2021)

2024-10-25 16:27:52 | 社会福祉学

少し前の調査となるため、現状とは異なった面もあると思うが、地域を単位とする「連携」「情報共有」「情報交換」の課題を知ることができる。

引用

(調査結果より)

<行政への期待と限界>

・現場レベルだけで方向性を定めても、行政が別の方向を向いていれば何もできない

・行政の担当が数年で移動してしまうので話がなかなか進まない

・行政職員の学ぶ場を作り、3年程度の腰掛的な関わりではなく、きちんと取り組んでいただきたい

<専門職への期待と限界>

・地域ケア会議や多職種連携研究会への医療機関従事者(特に医師)の出席率が低い

 

調査結果には、上記以外に、大変興味深い回答が多くまとめられている。

私はいま、地域包括支援センターに勤務しているが、「高齢者の生活問題=地域包括」と行政が必要以上にこだわり、

電話や数分の窓口対応で支援センターに足を運ぶように誘導していることが多くある。実際には役所内で済む課題であってもだ。

初回面接の重要性については、社会福祉従事者は教育の中で叩きこまれ、職能教育でも繰り返しトレーニングされている。

各々の機関の特色を把握し、役割分担と役割遂行をする。まずはそこではないかと、本論文を読んで痛感した。

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「ヤングケアラー 介護する子どもたち」毎日新聞取材班 (2021)

2024-08-18 17:32:03 | その他

今は「ヤングケアラー」という言葉が浸透しつつあるが、それはほんの数人の学者、実践者、記者たちの奔走の結果であることを知った。

「ヤングケアラー」という事柄のみならず、ある事象を課題として浮き上がらせ、そして認知させるための難しさを感じ取ることができる。

引用

・介護をする子どもたちは世間から「親孝行な子」「えらい子」「仲のいい家族」と称賛されることはあっても、「支援すべき対象」とみなされることは少なかった。

・(当事者からの言葉)「若者が介護をすることで払った犠牲は、自己責任なんでしょうか?」「子どもの知識の無さをなめちゃいけない。はんぱなく知識が無い。だから『助けて』と外の世界に手は伸ばせない」

 

社会経験が少ない年少者が「いまやっていることは当たり前のことだ」と思うのは、たやすいことだ。本来、周りの大人が多くの選択肢を提示し、社会(生活)にはたくさんの要素があることを伝えていかなければならない。

本書を読み進めると、大人たちは、周りとは生活リズムや生活習慣が異なる子供たちに対し、どれほど都合の良いものさしで解釈していたのかと、愕然とさせられる。

 

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「高齢者における感謝の対象-対人関係の中あるいはそれ以外で生起する感謝の検討-」小野真由子ら(2023)

2024-06-22 10:31:45 | 看護学

『応用老年学』第17巻第1号

高齢者の感謝の対象を明らかにするために、半構造化面接を実施。人生の最終段階にある高齢期で、感謝の対象を通してどのよう充足感を覚えか…

などを分析している。読み物としては難しいが、ぜひ高齢者にケアを提供している支援者に読んで欲しい。

 

引用

・感謝は(中略)良好な人間関係にも寄与する心理として位置づけられている。

・(注:文献を引用し)老年的超越は、高齢者がそれまで持っていた物質的で合理的な見方が、宇宙的、超越的な見方へと変化していくことを示

 し、人生満足度を向上させるという。

・感謝は、高齢者の豊かな人生を支える非常に重要な心理であると言える。

・(調査結果より)高齢者の感謝の対象は、自分から他者への利益、また自分に関係する個々の出来事や環境から人生全体へと広がっていること

 がわかった。背景として利他的、心理社会的発達など様々な要因の影響が示唆された。

 

支援者に攻撃的な態度や口調を示す高齢者。いつも「おかげさまで」と口にする高齢者。穏やかな生活を過ごせているのはどちらであろうか?

心穏やかに…という面で考えると、後者であると考える。では、その2者の違いは何であろうか。

生育環境、人とのつながり、財力…きっとたくさんの事柄がその人を形成しているのだと思う。

できればより多くのひとが、心穏やかに晩年を過ごせればと思う。そのために支援者は何ができるのか?

その答えを出すことに、この論文は一助になると感じている。

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「児童養護施設における働き続けることができる職場環境の諸要因-児童養護施設職員へのアンケート調査を通じてー」座安晃生(2023)

2024-05-13 19:39:03 | 社会福祉学

『社会福祉学評論』第24号

児童養護施設で働き続けることができる要因の構造について、アンケート調査を通して明らかにしている。

「賃金アップ」「やりがい支援」といった、短絡的な分析・考察ではない論調に共感した。

またこの結果は、児童養護施設職員のみならず、広く様々な職種に通じるものがあると思った。

 

引用

・職員関係における対等性の有無によって職員の定着あるいは離職する可能性がある

・分散構造分析によって働き続ける職場環境を形成するのは、「対等な職員関係」→「定着可能度」→「仕事・糧の両立」のプロセスが

 求められるということが示唆された。

・女性職員は、子どもの甘えを受け止めるという代替的に家族の機能を担う重要な位置づけのため、

 女性も働き続けることができる職場環境の整備が課題であると考える。

 

 介護職員の人材不足は広く知られている事実であるが、児童福祉に従事する職員の不足も今に始まったことではない。

 複雑な背景をもつ子供が増え、職員の負担はこれまでにないほど、重いものになっていると聞く。

 子育て支援、子ども真ん中●●会議などなど、いろんな議論やいろんな施策が飛び交っているが、上にいる人たちは、

 見るべきものをきちんと見てくれているのだろうか、と考えさせられる論文であった。

 

 

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「成年後見人と医療・介護従事者との合意形成における現状と課題」永野叙子(2022)『社会福祉学』第63巻第4号

2024-04-18 16:48:17 | 社会福祉学

副題:身寄りのない認知症高齢者の医療合意に焦点をあてて

第三者後見人への半構造化面接調査を実施し、語りを丁寧に分析している。面接対象者は1名であるため一般化するには限界があるとは思うが、

先行研究をうまく活用し、リアルな現状と具体的な課題を提起している。

 

引用

・多くの場合、後見人は専門的な医療知識を持ち合わせていないため、医療の選択では医療従事者によるエビデンスに基づいた医療的情報に委ねざるを得ない実情がある。本事例では後見人と医療従事者との間には医学的情報の格差がみられ、「情報の非対称性」を指摘できる。

・後見人が一時的に医療従事者の言動にたじろいだとしても、これまでの後見活動で把握してきた本人の意向に基づき、本人の代弁を根気よく努めることが重要であったと思われる。

 

「認知症になったときに、意思疎通ができなくなった時のために…」事前に意思表示を残しておく必要性について、盛んに言われている。しかし本事例のように、積み重ねてきた意思表示のひとつひとつが、「月日が経っているから」「認知症になる前のもので、いまのこの状態のものではないから」といった理由で、活用されないこともある。

節目節目で意思確認をしておく、そして支援者がひとりでその意思確認をし記録を残すのではなく、チームで共有していく必要性がある。これは先日、介護支援専門員の更新研修で何度となく講師から言われたことである。

単身高齢者が増加するなかで、支援者が、そして自分たちが、肝に銘じていかねばならないことなのだと思う。

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「自殺企図後のうつ病患者の企図前・後における感情および状況の分析」長田泰子、長谷川雅美(2013)

2024-04-10 20:19:28 | 看護学

副題:ナラティブ・アプローチによる語りから

『日本精神保健看護学会誌』 Vol.22 No.1

 

自殺企図後のうつ病患者(11名)を対象に、非構造化インタビューを実施。自殺企図前後の感情と状況を丁寧に分析し、まとめている。

 

引用

・本研究における「自殺企図」の定義…「自殺とはどういう行為かを知っている者が、自らの意志で死を求め、致死的な手段・方法を用いて自らの

 命を絶とうとすること」

・インタビュー結果より。自殺に至るまでの感情

  【生への絶望感】<病気がよくならなかった> 

  【自殺の衝動】<死ぬしかないと思った>…死ぬ前に電話しておいでって言う人もいるんだけど、本当にそうなると、携帯電話なんかそこに

    持っていかないですね。相談とかできない。

・分析により明らかになったこと⇒参加者は、自殺が未遂に終わったため、精神科病棟での入院治療を受けていた。しかし入院中、あるいは退院

 後の外来受診の場においても、強い自殺念慮が続いていることや今回の自殺の原因については、主治医をはじめとした医療スタッフに対し、本

 音を語っておらず、【医療者への隠された本音】が存在することが明らかになった。

  ⇒医師や看護師のみでなく臨床心理士やソーシャルワーカーなど多職種が連携して自殺未遂者の評価を行い、それに基づいた支援を包括的に 

   行うことが求められ、組織的介入の必要性が示唆された。

 

最近まで担当していた方は精神疾患があり、季節の変わり目ということもあったのか不安定な時期が長く続いたため、何かの参考になればと本論

文を手にした。

主治医である精神科医は、「傾聴」を重んじ、そのクリニックの精神保健福祉士さんは「医師が本人に伝えたところをカルテで確認すると…」が

常で、誰がその方に向き合っているのだろうか…と愕然とさせられた場面を何度か経験した。その方は複数の内科的疾患を持ち、「治らないのに

薬をたくさん飲まないといけない」という残酷さに、打ちのめされていた。複数の医療機関、複数のサービス事業所が関わることのメリットを見

い出せぬまま、なんともモヤモヤしていた。

包括的に…多面的に…というケアのかじ取りを、だれがどのように行うのか。それは本当に難しい、と実感している。

 

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「一般市民への老衰死に関するインターネット調査」今永光彦、外山哲也(2021)『日本在宅医療連合学会誌』第2巻・第2号

2024-02-27 12:33:50 | 医学

インターネット調査を実施しその結果を用いて、一般市民は「老衰死」についてどのようなイメージを抱くかを論じている。

引用

・「老衰と死亡診断されるのに妥当だと感じる年齢の目安について」は、90歳以上が最多で、次いで85歳以上、95歳以上であった。

・先行研究を提示し…上記と同様の質問において、「年齢的な目安はない」が最も多く、次いで80歳以上、85歳以上、90歳以上であった。

・死に対する否定的態度である「死からの回避」のスコアが高いと、有意に老衰を志望診断時の死因として妥当と感じていなかった。

 

先日、ケアマネの更新研修を受け、認知症の方、精神障がいの方に親族がいなかった場合、医療的な処置を誰がどのように担えるのか?

という議論があった。長い時間議論が続き、ひとつの解決策として、ACP*)の活用が有効だという意見で一致した。

医療が進歩し、いろんな形での「生存」が可能となってきた。

個人的には本論文の調査結果で、90歳以上の死が老衰として妥当であるという意見が最多であったという結果が驚きであった。

私の父は84歳で亡くなり、死亡診断書としては「間質性肺炎の増悪」であるが、私としては「老衰」と受け止めている。

それはきっと父が、

「痛いのは嫌い」「管でつながれるのは嫌い」「よぼよぼで生き続けても恰好悪い」と、常々言っていたからだと思う。

だからこそ、「もう一回手術をするとよくなるかもしれません」「IVHをすることで生命が維持できるかもしれません」

「まだ80代前半ですから、手術適当だと考えます」という主治医の見解とは異なる選択をした(できた)のだと思う。

手術で症状が軽快しても、在宅酸素は持ち歩くことになるだろう。それは本人が望むことだろうか?またお腹を切ることになるだけで、

嫌ではないのだろうか?…この問いを、私たち家族は、数日間ずっと考え続け、そして看取った。

高齢でも健康で生き続けられればベストであるが、死は常に並走しているものである。それは私が仕事を通じて教えてもらったことである。

年齢うんぬんではないけれど、年齢を重ねていくからこそ、常にどう生きたいか、どう死にたいかを、口に出すことも大切なんだと

思っている。

*「ACPとは?」日本医師会ホームページより引用

ACP(Advance Care Planning)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、 本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援する取り組みのことです。
 

 

 

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「福祉事務所ワーカーの専門性とは何か―現場から社会福祉主事のあり方を再考する―」高木仁根(2021)

2024-02-05 15:51:05 | 社会福祉学

『社会福祉学』第62巻第2号

福祉事務所ワーカーに求められる専門性について、「公務員の専門性」にも焦点をあて、現役ワーカーへのインタビュー調査をもとにその全体像の素描を試みている。

インタビュー調査対象者は3名と少ないが、その声を丁寧に分析、考察している印象を受けた。

 

引用

・最低生活保障は必ずしも経済給付だけを意味するのではなく、相談支援の実践と一体となった生活保護実践によって達成される。

・調査結果から導き出された概念的カテゴリー:面接、人権保障、連携、計画的実践、法適用、能率性、専門性の自覚、外部視点

・調査回答より:

「ケースワークをしたというより訪問数をこなして記録を書いて事務処理を早くするという方がやっぱり評価されるところに多少のジレンマを感じる」

「数字の評価となってしまって、日々の実践、目に見えない努力が軽視されていないか不安」

 

公務員のお給料は税金から捻出されているため、その公平性と効率性が求められているのであろう。

しかし一方で、公的な立場だからこそ、指導や強い忠告を率先して行ってくれる立場であって欲しいとも思う。

最近の私の勤務先での経験。いわゆる生保ビジネスで、管理人さんが経済的搾取をしているかもしれないとヘルパー事業所から連絡があった。

地域包括の職員は区の窓口にその報告について相談をした。「それでそちらはどう考えていますか?」としか聞いてこない。

虐待の定義として当てはまるのか?という外枠をとても気にしている。

「他の業務に追われ、このケースに関わる時間がないのかもしれない」と推測し、地域包括とヘルパー事業所で経過を慎重にみていた。

そして数日後、「そういえば、先日のケースは虐待の定義に入りましたか?答えは出ましたか?」と区から問い合わせが入った。

定義の範疇に入るかどうかがグレーであるが、食材を買うお金を奪われている様子であったため、

フードバンクと連携をしていることを説明すると、「では虐待という定義に入ったら、教えてください」と電話を切られた。

定義優先?地域住民の人権優先?どこに向かって仕事をしているのか。

本論文を読み、ジレンマを抱えながらも地域住民を向いて仕事をしている公務員の方々が、もっと報われそして増えて欲しいと切に思う。

そのためには何が必要なのか。現業員のたくさんの声なのか、地域住民からの感謝の言葉なのか、関係機関からの報告なのか…。

大きな組織であるがゆえに、難しいことなのだろうということだけは、理解できた。

 

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「障害者就労継続支援B型事業所における工賃向上の阻害要因と対策に関する研究」遠山真世(2020)

2024-01-24 16:20:01 | 社会福祉学

副題:5事業所のインタビュー調査からみた 現状と課題 『中国・四国社会福祉研究』第7号

私の勤務しているエリアでは、B型作業所の利用がブーム化している。そして同時に、B型作業所の良くない話を多く耳にする。

本来、障害者就労継続支援B型事業所は、何のために活動をしているのか。その本質を知るために本論文を読んだ。

本論文は、インタビュー調査を実施し、その現状と課題を丁寧に論じている。

 注)・B型事業所とは?…一般雇用の難しい障害者に就労支援を行うことを目的としている

 

引用

・利用者の支援ニーズが増加・多様化しており、個々の利用者のニーズに合った作業や支援を提供することが重要となっている

・作業は利用者に合っているものの、それらの単価が安いことが指摘されていた。それでも、利用者に合った作業を提供するために、単価が安い 

 作業を引き受けざるをえない構図になっていると考えられる。

・工賃向上に限界を感じるとともに、利用者支援と工賃向上の間でジレンマに陥っていることが明らかとなった。

 

生活に張り合いをもたせ、社会性を身につけることができる。それが就労支援の目的のひとつであろう。利用者ひとりひとりに対し、見守り(支援)と労働(教育)といった、2つの側面からアプローチをすることは本当に難しいのだと思う。それを事業所の自助努力だけに頼ることは、本論文でも指摘されているように限界がありすぎる。

一方で、事業所と親しくしているクリニックが診断をつけ、作業所に通えるように道筋をつけているという話も聞く。それが利用者に有利に働くことであればよいのだが、そうとは限らない。そこも行政は見て見ぬふりをしている様子も見受けられる。

民間の力で伸びる部分、強制力をもった公的な力で伸びる部分(守ることができる部分)、うまく掛け合いができればと切に思う。

 

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