『保健医療社会福祉研究』 Vol.32 2024.3
身寄りのない高齢者が自宅で生活し続けたいと望んだ時、ケアマネージャーが過度に疲弊せずに役割を遂行するためには、何が必要なのか?
…この疑問を検討するために、基礎資格として社会福祉士資格をもつケアマネージャーを対象にインタビュー調査を実施、考察を深めている。
引用
・中堅、ベテランのケアマネージャーにおいても、【ひとり死に伴う葛藤】と【解決できない問題への対処】の循環がみられたことが特徴であった。
・葛藤と対処の繰り返しは、人を最期まで全人的存在としとらえているからこそ、生まれるものである。人を全人的存在としてとらえ、その人の核心を守る、その人が自らの存在意義を感じられるように働きかけるというスピリチュアルなニーズもふくめて支援をしていくことが、人の尊厳の保持につながっていくと考える。
・身寄りのない高齢者の自宅で生活し続けたいというニーズを充足し、彼らの権利を擁護していくためには、ケアマネージャーが【ひとり死に伴う葛藤】と【解決できない問題への対処】を循環的に経験し続ける覚悟が必要であるといえる。
病院や施設等、一つの組織で看取り支援を行った場合は、葛藤や課題、喪失の苦しみ等を共有しやすい。在宅での看取りは、他職種他機関がベースであり、時間的、環境的にもそれらが共有しにくいのは、必然であろう。しかし電話、FAX、対面等で、一緒に切磋琢磨できる時間は、一組織内で形成されるチームには劣らないくらいに、やさしくて難しくて、やるせなくて…いろんな要素が凝縮されているかけがえのないものであると体感している。
本論では社会福祉士を基礎資格としているケアマネージャーを調査対象としているが、「社会福祉士」により過ぎずにすべてのケアマネージャーが共感できるものだと感じた。「覚悟が必要」、専門職であればそれは当然のことではあるが、ケアマネージャーの高齢化も進み、人員不足に加速がかかっている。専門職が覚悟を過度に抱えすぎないよう、いろんな策をいろんな方面で模索して欲しいと願う。