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【アルバムレビュー】超越的漫画/曽我部恵一

2019-10-30 | アルバム感想
                              







1.ひとり
2.すずめ
3.リスボン
4.うみちゃん、でかけようよ
5.あべさんちへ行こう
6.もうきみのこと
7.そかべさんちのカレーライス
8.6月の歌
9.マーシャル
10.バカばっかり








曽我部恵一史上・・・
サニーデイ、ソカバン、ランデブーバンドとか全部含めても
最も売れなかった(であろう)ある意味最大の問題作
それもそのはず、
このアルバム、
聴いてて意味がない曲が多い。
というか、「だから何?」って曲がほとんどだと思う
さり気ない日常の歌・・・とか言っても、感情の吐露だったり前向き後ろ向きだったりメッセージ性や互換重視云々、
詩的な言い回しとかロール感とか、そういう「色」が一切ない
ぶっちゃけただ思ってる事をそのまんま言ってるだけの曲がほとんど
つまり、オチのない曲だらけなんですよね
でも、
その、
過度に歌詞に情報がない感じ
良くも悪くも適当な感じが心地良くて、
ある意味こういうのこそ「本当に人間臭い音楽」なんじゃないか?とも思える傑作だとも感じます。

「リスボン」は(本当に)リスボンって言葉の響きがいいな、って言ってるだけの曲だし
「あべさんちへ行こう」は総理大臣の家に行ったらいいもん出してくれそうだな~っていう、
本当にただのおっさんの妄想っていうか・・・
しかし、
普段我々が考えてる事って大体こういう下らない事だと思うんですよ
そういう意味ではなんかこう、別の角度から掘り下げた真の人間味。。というか、
まあ大体人が曲にするのって日常の中でも気分の上げ下げが激しい時だったりドラマティックな時だと思うんです
このアルバムは、まったくそうではない、何も考えてなかったり適当な瞬間を切り取ったアルバムで
でも人間ってポジでもネガでも強まってる時間の方が少ないですし、ドラマティックな瞬間なんてホント微々たるもんで、
そういう想いを記録するというのは本当に意義深い大切な事だとも思うんですが、
敢えてその真逆・・・特になんでもない心境を歌にしました。みたいな、
ある意味最高にリアルな(笑)作品に仕上がってるんですよね。


でも、メロディ、アレンジは勿論一級品。
大瀧詠一に通ずる歌い方でヘイト感情を高らかに歌う(だけ)の名曲「もうきみのこと」
徒党を組んで無敵感を強調する連中へのアンチテーゼでもある「ひとり」、
グッドメロディと爽やかなアレンジが聴いてて小気味良い「すずめ」
(どうでもいいけど、この曲の歌詞は多分一番意味がない・・・けど名曲と思う)、
この中では一番味があって普段の曽我部恵一らしいキャッチーな「6月の歌」を入れてるのもニクい
この曲が入ってる事によって、本当の意味で日常というか、こういう瞬間も勿論ある。という示しになってる
そして極めつけはただ単に愚痴ってる(だけ)のパンクナンバー「バカばっかり」で終わる締めも絶妙
アルバムの最後にはバラッドだったり元気な曲だったり総括的な曲だったり・・・という
セオリーすら無視してただ単に怒鳴ってる(だけ)の曲で散らかして終わるのは、
ある意味最高にロックンロールな気もするんですが、、、
まあ正直聴く人を選びまくる作品なのも間違いない。

歌詞に意味がない、といっても
大体互換重視、言葉遊び、英語に聴こえる日本語・・・など
アプローチやサウンドに集中してもらうためのギミックだったりするんですけど
今作はそういった「工夫」のくの字も見られないくらいに、
そのまんま無意味な事を気持ち良いサウンドに乗せて歌い続ける、という徹底っぷりが凄いと思う
でも、逆に過度な意味合いを排除することによってすっごい楽に聴ける効能だったり、
他に一切類似性の高い作品が見当たらないなど独創性の高い名盤だとも感じます
前衛的・・・という言葉は安易かも分かりませんが、
好きな人はとことん好き、というか
無性に「なんか好きなんだよなあ。」って言いたくなる中毒性の高いアルバムだと思っています
個人的には大好きなんですが、受け付けない人も多分いると思います
でも本作はそういう人を選ぶところも魅力っちゃあ魅力なんでしょう。
実に痛快な作品です!