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山田シロ彦最新作「早朝始発の殺風景」上下巻 感想

2023-01-10 | 山田シロ彦
表紙が繋がってるのが何とも素敵。。











「凛とチア。」「青年少女よ、春を貪れ。」の山田シロ彦先生による最新作。
ちなみに本作は青崎有吾氏による同名の小説を漫画化したもので、
(恐らく)原作付きの連載は初めてになると思われます
 で、
これが実にイイんですよね。。
原作が元々ある作品なのに、なんかどこを切ってもシロ彦さん節が漂ってる感じがします
それは、例えば青春の機微だったり、少年少女のロマンスの要素だったり、
色々とこじらせてる感じだったり、セクシャルマイノリティのエッセンスだったり・・・
否、
シロ彦さん節というのも合ってる気はするけど、
というよりも、
シロ彦さんにこの話が来たのがよく分かる・・・と言いますか、
シロ彦さんがコミカライズするにとっても適してる原作、、、
と表現すべきかもしれません。




上巻「早朝始発の殺風景」より。



それにしても、
改めて自分はこの方の作風好きだなあ。って感じました
まず、作画の繊細でありながらポップで、写実的でありながら漫画的でもある感じ・・・が好きですね
つまりは様々な観点から絶妙なラインを往ってる感覚があるんですよね
それと、
日常の些細な感情の動きを漫画にするのが凄く巧みな印象もあります
例えば、
「メロンソーダ・ファクトリー」の、
自信満々で友だちなら賛同してくれるだろう~と思ってた意見を、
気まずそうに否定された時の空気感の表現は素晴らしいものがありました
あれこそ、
青春のこじらせというか、
我々の日常・・・って感じはしますね(笑
ああいう日常を送ってる~という意味合いではなく、
上手く行かなかった時の感情が空気と共に動揺する感覚、、、ですね
それと、表題作でシリアスな会話の中にも時折覗かせる男性のどうしようもない性癖の露出・・・も、
すっげえ良かったし、
そう、
❝空気感❞を漫画に落とし込むのがやっぱりすごく上手い様に感じられるんですよね。
そういう中で紆余曲折ありながらも生きてるキャラには(表情含め)愛嬌があってとても愛おしく想える。
なんだろう、色々こじらせつつも、どのキャラにも根底にはピュアな想いが垣間見える感じ。
 勿論原作ありきの作品ですが、そういう意味では、
「山田シロ彦さんらしさ」もふんだんに出ている様な漫画に仕上がってるなぁ、と。
この絶妙にかゆいところに手が届くような作劇はシロ彦さんの武器になってくような気がします。
いちファンとしての勝手な願望でもありますが。。




下巻「夢の国には観覧車がない」より。



ストーリーに関して言えば、
基本的に推理(ミステリ)を軸として、
青春模様を舞台に据えた短編集~という感じですね
個人的に、
推理要素が強い作品も、
短編が連作で描かれるような作品も、
普段あまり読んでないのでそういう意味ではシンプルに新鮮で楽しかったです
俗に言うオムニバス連載・・・というヤツに属するんでしょうか
思えば、
最近は一人の主人公が居て~という漫画しか読んでなかったので、
こういう風に様々な主人公たちの物語を読むというのは中々斬新にも思えました
それは久々というのも加味されてたとは思いますけど、こういうのもアリだなとか感じましたね
様々な人間模様を味わえる感覚、、、が確かにありました
最後に、
すべての章の主人公たちが勢揃いして繋がる感じも素晴らしかったですし、
各々のエピソードの終わり方がどれもキッパリと終わってるところも読んでて好きでした
推理に関しては自分の頭の出来もあり中々明かされるまで結末を予想出来なかったのですが(笑
明かされてみると
「ああ、なるほど。」と純粋に思えるので、
上下巻と短いですが繰り返し読むのにも適した秀作に仕上がってるな~、と想いましたね。
読んでいて、各々のキャラを純粋に応援したくなる感じは本当シロ彦作品らしくて素敵でした。。









ちなみに、
一番好きなエピソードは「メロンソーダ・ファクトリー」ですね
なんでしょう、あのエピソードは本当❝思春期の集合体❞という印象で大好きです
なんというか、「他人と違うこと」を一生懸命考えてこそ一人前のこじらせ青春人間~だと言えますね笑
そんな山田シロ彦さんの2023年の新作にも期待しつつ、
本作も愛読していこう~って想いました
電子書籍も出てますけど、
個人的には並べた時に表紙が繋がる仕様&表紙自体の加工の手触りが良いコミックスがお勧めですね
カバー裏の仕様もお洒落で装丁にも気合が入ってるのでやっぱり自分は紙派です.....!!
単巻あたりのページ数が少な目なので良い具合に読みやすいのも良きでした。