令和4年12月8日 農業
田んぼダム、効果一目瞭然 鳥取県が比較水田設置 17集落270ha実施へ
鳥取県は、田んぼダムの普及に本腰を入れる。
理解を深めるため本年度、モデル圃場(ほじょう)を県農業試験場内(鳥取市)に設置。
地域のリーダーや農家を招いた実演会を開いている。
本年度は前年度より7増の17集落、112ヘクタール増の270ヘクタールで実施の合意を得た。
2025年度に500ヘクタールを目指し、将来には県内全域で田んぼダムの設置を目指す。

農家招いて実演会
県によると、通常の水田と田んぼダムを比較・実証できるモデル圃場は全国で唯一。
農家や住民に、雨水を一時的に貯める効果を示し、水害に強い地域づくりを促す。
過去10年で県内での河川氾濫や浸水被害の発生頻度は、2倍に増えている。
このことを受け、21年から水害対策の一環で県が田んぼダムを普及している。
ただ、農家からは「水をためてあぜが崩れないか」「やり方が分からない」といった声が多く、モデル圃場を設けることにした。
幅3~6メートル、長さ8メートルの田を11区画造成。
うち5区画を田んぼダム実施区画として落水口にせき板をはめる。
せき板によって、大雨時の水位は通常時は約5センチのところが約15センチとなる。
実演会では、双方に1時間500ミリ相当の極端な雨量に相当する水を流し込み、田んぼダムの効果や水田の状態を実感してもらう。
さまざまな落水口に対応する、せき板も紹介する。
本年度はこれまで実演会を4回行い、農家ら延べ約260人が参加した。
アンケートで理解度を尋ねたところ、ほぼ全員が「理解できた」と答えた。
「せき板の作り方などを積極的に聞いてくる人も多い」(農地・水保全課)と手応えを語る。
今後、モデル圃場で田んぼダムの米の収量や品質などへの影響を検証する。
県は「実施には農家だけでなく、住民の協力も不可欠。
分かりやすくして認知度を高め、取り組む集落を増やしていきたい」(同)と話す。
<ことば> 田んぼダム
水田の落水口に、水位を調節するせき板を取り付けることで大雨時に田へ水をとどめ、
少しずつ排水する。このことで、地域や下流域の浸水被害を抑える。
河川の流域の関係者が防災で協力する「流域治水」の一つとして注目される。
農水省は、普及に向け4月に「田んぼダム」の手引を公開した。