・長ぐつをはいたねこ
ある粉引き職人が死んだとき、末息子が遺産でうけとったのは猫。末息子は「猫を食べてしまったら、後は何もなくなってしまう」と嘆くが、猫は「心配要りませんよ。まず、私に長靴と袋を下さい。そうすれば、あなたがもらったものが、そんなに悪いものでもないことが分かります」と応える。そして、猫はウサギを捕まえ、王さまに「カラバ侯爵からの贈り物です」と言ってウサギを献上し、その後も狩りの獲物を侯爵からといって、献上します。
ある日、猫は王さまとお姫さまが馬車で散歩するという情報を知って、末息子に王さまが通る場所で水浴びをさせます。そこに王様と姫が通りがかると、猫はその前に出て「大変です、カラバ侯爵が水浴びをしている最中に泥棒に持ち物を取られてしまいました」と嘘をつく。
気の毒に思った王さまが自分の衣服を末息子に提供すると、末息子は見違えるような立派な若者になります。
末息子と王さまは、馬車に同乗し、猫が馬車を先導することになり、道で百姓に会うたびに「ここは誰の土地かと聞かれたら、『カラバ侯爵様の土地です』と言え。でないと、細切れにしてしまうぞ」と脅します。本当は、人食い鬼の土地だったが、百姓は王さまに訪ねられると「カラバ侯爵様の土地です」と答える。そして、王さまは「カラバ侯爵」の領地の広さに感心する。
やがて城に着く。ここは人食い鬼の城。猫は人食い鬼をだまして鼠に姿を変えさせ、捕まえて食べてしまいます。
そうして城を奪い、王さまが着くと「カラバ侯爵の城にようこそ!」と迎える。王さまは「カラバ侯爵」が広い領地をもち、おまけに豪勢な城をもっていることに感心し、王さま娘婿になってくれないか、という。
「カラバ侯爵」はその申し出を受けてその日のうちに姫と結婚し、猫も貴族となってネズミ捕りは趣味でやるだけに。
・文なしハンス(チリ)(世界の民話11 アメリカ大陸/小澤俊夫・編 中村志朗・青山隆夫・訳/ぎょうせい/1999年新装版)
ハンスでは猫の役割をがネズミが担うが、川におちて、ずぶぬれになり王さまの衣服をかりるシーンや、いかに財産をもっているかを王さまに見せるために、領地ではなく、羊の大群や牛の群れ、たくさんの荷馬、ヤギ、さらには「世にもすばらしいお屋敷」が登場する。
この話では、いったんネズミはハンスのところからいなくなるが、1年後に姿を現し、ハンスが自分のことを忘れていないか試すシーンもある。
この話には、ネズミが王さまの城にいくとき「犬どもがかみつきませんように!、犬どもがかみつきませんように!」とさけぶ場面や、ハンスが王さまから借りた衣服の着かたも知らない、せっかく用意された料理の名前も知らない等、「文なし」のイメージがピッタリの場面もあって「長ぐつをはいたねこ」とはまた違った面白さもある。
・青い山の巨人ヘルゲ=ハル(ノルウエー)(世界のメルヘェン図書館2 巨人シュトンペ=ピルト/小澤俊夫・編訳/ぎょうせい/1981年初版)
冒頭に、三人の息子が遺産をわけることになり、一番上が、古いなべ、二番目が古いフライパン、三男坊は残ったねこをもらうしかないとあって、「長ぐつをはいたねこ」と同じ「話型」である。
「一番上は古いなべを人に貸したら、あとでなべの底をほじくって食べ物にありつける。二番目はフライパンを人に貸したら、あとでフライパンについたパンのはしっこがもらえるんだ」という、末っ子のつぶやきがなんともいえない。
ねこが大活躍するのは同じであるが、こちらのほうが3回の繰り返しがうまく取り入れられて、より昔話のパターンにちかい。