いぐさのずきん/子どもに贈る昔ばなし13 桃もぎ兄弟/小澤俊夫・監修/小澤昔はなし研究所/2012年初版
塩味?がきいたシンデレラ物語です。
ある領主に三人の娘がいたが、領主は娘たちがどれほど自分を愛しているかをたずねます。上の二人は「わたしの命と同じくらい愛している」「世の中の何よりも愛している」とこたえますが、末の娘は「生肉がお塩を好いているくらい愛している」といいます。この答えを聞いた父親は末娘を屋敷から追い出してしまいます。
追い出された末娘は、ある大きな屋敷にいき、「行くところがありません。仕事はなんでもします。お給金もいりませんからここにおいてください」と頼み込みます。
やがてこのやしきで舞踏会が開かれることになり、使用人も舞踏会のお客様を見に行くことが許される。末娘もそーっと舞踏会に出かけていくと、やしきの若主人は末娘をみてすっかり夢中になるが、末娘は舞踏会が終わらないうちに走って自分の部屋にもどって寝ているふりをします。こうした舞踏会がさらにひらかれるが、3回目の舞踏会で、若主人は、名前も、どこからきたのかも話さない末娘に指輪をわたして、また会ってくださいと言う。
若主人は美しい末娘のことを思うあまり病気になってしまう。料理女が若主人のおもゆをつくっているのを聞いた末娘は、自分にもおもゆをつくらせてくださいとたのみ、そのおもゆに指輪をこっそりすべりこませます。
それをみた若主人はおもゆをつくったものが誰かを問い詰め、末娘がつくったことを知ると、あっという間に元気になって二人は結婚することに。
結婚式に末娘の父親も招かれるが、末娘はすべての料理に塩をひとつぶもいれない料理をつくるようにいいつけます。ごちそうの席に着いた人々が肉を食べてみると味がなくて食べられません。裕福な領主は、あれこれと料理を試してみて、塩のない料理が食べられないことがわかって、はじめて末娘のいったことの意味がわかります。
主人公が舞踏会にどんなドレスを着ていったのかは、さらりとしていて、もともと美しいドレスを着ていて、いぐさを集めてずきんのついたマントをつくって美しいドレスをかくしていたというもの。
「いぐさのずきん」は、シェクスピアの「リア王」の元ネタという指摘もあるという。
父親が、娘や息子にどのくらい愛しているかたずねる日本の昔話は目にしたことがないので、このあたりがお国柄をあらわしているようである。