白髪の滝/中国民話 宝のかご/またの せいこ・訳 え・新堂圭子/けやき書房/1995年初版
人間の生活にどうしても欠かせないのが火と水。
昔は、川の水や雨水が貴重な水資源でしょう。
この話は、中国少数民族の侗族(トンぞく)の話で、水不足になやむドウガオ山のふもとの村が舞台です。
水は、7里先(一里は、尺貫法における長さの単位であるが、現在の中国では500m、日本では約3.9km、朝鮮では約400mに相当するとある)の川からかついできます。
ある日、母親と二人暮らしの髪の長い娘が、ドウガオ山の中腹の岩場に、赤い丸大根をみつけます。
おいしそうと赤大根をぬくと、水がほとばしります。しかし、赤大根はすぐに娘の手をはなれて、もとの穴にすっぽりはまってしまいます。
娘はもう一度赤大根をひきぬき、穴に口をつけて水を飲みます。穴から口をはなすと赤大根はまた元の穴にはまります。
ところが突然大風がふいてきて、娘は山の洞穴にはこばれてしまいます。そこにいた山神が、この山の水の秘密を人に話したら、お前を殺すと脅かします。
それからすっかり元気をなくした娘は、ほほには赤みがなくなり、ろうのように青ざめ、黒い髪はだんだんいろがあせてきます。
しかし、遠い川から水をはこんできたおじいさんが、石につまずき倒れ、水桶はこわれ、足から血をながすのをみた娘は、村の人たちに水のありかを知らせます。
村の人たちは赤大根を砕き、穴をひろげると、その穴からは、とうとうと水が流れ、山の下のほうにながれます。
やがて娘は大風にはこばれて山神の前にすわらされますが・・・・・。
モンゴルの「石になった狩人」とおなじように、村の人たちのために自分を犠牲にすることをいとわない話ですが、おわりのほうでは、山神から助かり、ほっとする結末です。
娘を助けるおじいさんは、みどりの髪とみどりの着物をきていますから、もしかすると森の精なのかもしれません。
蛇口から水がでるのが当たり前と考えている子どもたちには、どううけとめられるでしょうか?