天からおりてきた河 インド・ガンジス神話/文:寮 美千子 画:山田 博之/長崎出版/2013年
インドのガンジス河は北海道の北から九州の南の端までの距離をこえるといいます。このガンジス河にかかる神話ですが、壮大なスケールに圧倒されました。
絵をみるだけでも楽しい絵本ですが、神々が入り組んでいて全体像をつかむのに時間がかかるかもしれません。
ジョゴルという王には二人の妃。子どもをおさずけくださいと神々に祈ると、一人はかしこい男の子をうみ、もう一人の妃からはヒョウタンをうみおとします。ヒョウタンの種を、聖なる油を満たした壺にいれるとそこから六万!の赤ん坊が生まれ、みな兵士になります。
ある日、王は「馬祭り」を行うことにします。馬の歩いた土地は、すべて王の領土になり、最後に馬は神々の生贄として捧げられます。
馬の警備を任されたのは六万の王子。ところが馬はふいに姿を消します(生贄にされるぐらいならということか)。
王の命令で王子は、鉄のように固い爪で、干上がった海の底を素手でほり始めます。六万ヨージャナの深さ(途方もない深さでしょう)までほっても馬はみつかりません。
さらに「馬をみつけるまで、二度と帰ってくるな」という王の命令で、王子たちは地獄までほり、大地をささえる四頭の象まで(古代の人びとには、地上は象でささえられていると考えられていました)掘り進んでも、馬はまだみつかりません。
突然あらわれた草原には瞑想にふけるカビル牟尼がいて、これを知らない王子が「馬泥棒め!」「馬を返せ!」と、聖者に突進していくと、王子たちは火をふいて燃え上がり灰となってしまいます。
六万の王子の死を知った王は、もうひとりの息子オンシューマンに、馬をとりもどし、王子たちの魂の供養をするよういいます。
オンシューマンは、地の果てでいなくなった馬とカビル牟尼にあいます。
そこで王子の供養のためには、天を流れるガンガーの聖なる水が必要なことを知ります。
さらに馬を生贄として捧げたことにより、王は、神々の祝福により三万年地上を治めます。
王になった息子オンシューマンは、自分の息子に王位を継がせ、自分はヒマラヤで三万二千年の間修業を積みますが、ガンガーを地上に招けませんでした。
それから一千年後、ブラフマー神があらわれ、望みをかなえてやろうといわれますが、ガンガーは誰も受けとめられない、それができるのは、ただ一人青き喉をもつシヴァ神といわれます。
ここから実はクライマックスで、いよいよガンガーが天からおりてくることになるのですが・・・。
六万年があっという間にすぎるのは神話の世界です。