おじいちゃんがだっこしてくれたよ/シャーロット・ゾロトウ・文 ペネ・デュボア・絵 みらい なな・訳/童話屋/2007年
父親が6歳のとき亡くなって、唯一の思い出が蒸気機関車の運転士だった父と、運転席にのったこと。
多分一駅ぐらいだったのではなかったと思うのですが、熱かった石炭窯の熱気を今でも思い出します。もちろん今はそんなことは考えられないご時世です(あまりに古い記憶です)。
小さな男の子ルーの思い出は、おじいちゃんに抱っこされたこと、美術館で二人で絵を見たこと、だっこしてもらうとパウダーとあったかかったパイプのこと。
ある朝、ルーは目が覚めて、おじいちゃんをよびました。お母さんがルーの声をきいて、すぐにきてくますが、じつは4年前にお爺さんはなくなっていました。
そこから、お母さんとお爺さんの思い出の会話がはじまります。
多分共働きだった夫婦の子の世話をしていたおじいさんは、なにかあると飛行機でとんできたのでした。
母さんも赤ちゃんのとき、おじいちゃんに抱っこされたことを話します。
今では珍しい小形の絵本。何かしみじみしました。 誰でも、小さいころの両親やお爺さんお婆さんとの記憶がどこかに残っているのでは。子どもと昔の話をすることはありませんが、何かいい思い出を残せたかも気になります。
まほうのえのぐ/絵:林 明子:作・絵/福音館書店/1997年(1993年初出)
こどもが絵をかくとき、一番身近なのはクレヨン、色鉛筆でしょうか。
絵具となると、絵の具、パレット、筆を洗う水といつでも、どこでもというわけにもいきません。
お兄ちゃんが絵を描いているのをみて、よしみちゃんも使いたくてしょうがありません。いつも「ダメ」と言われますが、わたしもかきたいというよしみちゃんに根負けして、お兄ちゃんが絵の具を貸してくれます。
ぺたぺたいろをぬっていると、いろがまざりあって、どろのよう。
ボールが転がって、お兄ちゃんがはしってきて、「どろんこの えの できあがり!」とからかわれたよしみちゃん。
パレットと水入れを洗いに行くと、その間に、いろんな動物たちが絵の具をどこかへ持っていってしまいます。
大事な絵具をさがして森の中へいくと、動物たちが絵をかいていました。
いったんは、あっというまにみんな逃げだしますが、しゃくとりむしだけは、はっぱに赤い絵の具をぬっていました。
よしみちゃんが、しゃくとりむしに、きみどり、むささき、オレンジいろ色・・・と、だしてあげていると、動物たちがまた顔をだし、絵をかきはじめます。
りす、とかげ、ねずみ、へび、からす、きつね、くま、さる、うさぎ、すずめまでがもくもくと絵を描いている様子がとてもほほえましい感じです。
絵具だらけのよしみちゃんや動物たちですが、とっても楽しそうです。よしみちゃんの絵は裏表紙に。
動物が絵をかくという発想が新鮮です。
文章は線でかこまれ、どのページにもしゃくとりむしがいて、表紙と裏表紙の見返しにもしゃくとりむしがのびたり ちぢんだりしています。
絵具が魔法ではなく、絵を描く楽しさが魔法なのでしょう。