どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

なまはげ

2022年01月18日 | 絵本(昔話・日本)

     なまはげ/池田まき子・文 早川純子・絵/汐文社/2020年

 

 2018年ユネスコ無形文化遺産に登録された伝統行事「男鹿のナマハゲ」。

 「泣く子はいねが~」「なまけ者はいねが~」と毎年大晦日の夜、やってくる なまはげ。伝説だけでなく作者の思いもこめられているといいます。


 ある日、男鹿半島にある大きな国の王さまが、5匹の鬼たちと不老長寿の薬をもとめてやってきます。いくら探しても薬は見つからず、王さまは、「薬のことはあきらめた。お前たちは、ここに暮らす人たちの、役に立つことをするのだ」といいます。

 真剣に考えた鬼たちは、けわしい山をいくつも切り開き田んぼや畑を作り、道もこしらえました。雨の日も風の日も、せっせと働いた鬼たちに悲しいできごとがおこります。父鬼と母鬼が亡くなってしまったのです。

 気分をかえるため、村にでかけますが、突然あらわれた鬼たちの姿を見て、村人たちはびっくりぎょうてん。こわがり、逃げまどう村人をみて、鬼は腹をたてます。

 残った三匹の鬼の兄弟は、王さまにとりのこされ、親をなくしたさびしさをはらすかのように家々をなぎ倒し、田んぼや畑をあらすようになりました。

 このままでは村が壊されると、村人は、神社までにいく坂道に、一晩で千の石段をつくれるなら、あなたたちにおつかえします。つくれなかったら、村には二度と近づかないでほしいと、鬼との取引をすることに。

 鬼たちは、つぎつぎに石段を積み上げ、あと一段というときに「コケコッコー」と、一番どりが夜明けを告げます。

 負けることなこれぽっちもおもっていなかった鬼たちは、近くにそそり立つ杉の大木を大地につきさし、山の奥へと姿を消してしまいます。

 「あの一番鶏は、ほんものの鶏ではなかったらしい」という噂がながれ、だましたのではないかと、鬼が気の毒になった村人たち。

 山のむこうにある田畑や道、九百九十九段の石段も、鬼がこしらえたものと、村人の気持ちもかわっていきます。そして、鬼たちは神さまではなかったと思い、九百九十九段の上に建つ神社に、三びきの兄弟とその両親をまつります。

 それから、いつのころからか、大みそかになると鬼たちがやってきて「うおー、泣く子はいねが~」「なまけ者はいねが~」とさけびます。

 村人は、「なまはげ」が、幸運を運んでくる守り神であることを知っていて、来年もきてくれるようつぶやきます。

 

 なまはげには角があるため、鬼と誤解されるが、本来は鬼と無縁の来訪神といいます。

 集落ごとに伝承されてきたなまはげのお面や装束は、住民が畏敬の念をこめて手作りしたものだそうですが、版画でなければだせない迫力のあるものになっています。

 早川さんの制作過程がYouTubeで見られました。

 

 この伝統行事にはさまざまな困難があるようですが、何とか継続してほしいものです。


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