なまはげ/池田まき子・文 早川純子・絵/汐文社/2020年
2018年ユネスコ無形文化遺産に登録された伝統行事「男鹿のナマハゲ」。
「泣く子はいねが~」「なまけ者はいねが~」と毎年大晦日の夜、やってくる なまはげ。伝説だけでなく作者の思いもこめられているといいます。
ある日、男鹿半島にある大きな国の王さまが、5匹の鬼たちと不老長寿の薬をもとめてやってきます。いくら探しても薬は見つからず、王さまは、「薬のことはあきらめた。お前たちは、ここに暮らす人たちの、役に立つことをするのだ」といいます。
真剣に考えた鬼たちは、けわしい山をいくつも切り開き田んぼや畑を作り、道もこしらえました。雨の日も風の日も、せっせと働いた鬼たちに悲しいできごとがおこります。父鬼と母鬼が亡くなってしまったのです。
気分をかえるため、村にでかけますが、突然あらわれた鬼たちの姿を見て、村人たちはびっくりぎょうてん。こわがり、逃げまどう村人をみて、鬼は腹をたてます。
残った三匹の鬼の兄弟は、王さまにとりのこされ、親をなくしたさびしさをはらすかのように家々をなぎ倒し、田んぼや畑をあらすようになりました。
このままでは村が壊されると、村人は、神社までにいく坂道に、一晩で千の石段をつくれるなら、あなたたちにおつかえします。つくれなかったら、村には二度と近づかないでほしいと、鬼との取引をすることに。
鬼たちは、つぎつぎに石段を積み上げ、あと一段というときに「コケコッコー」と、一番どりが夜明けを告げます。
負けることなこれぽっちもおもっていなかった鬼たちは、近くにそそり立つ杉の大木を大地につきさし、山の奥へと姿を消してしまいます。
「あの一番鶏は、ほんものの鶏ではなかったらしい」という噂がながれ、だましたのではないかと、鬼が気の毒になった村人たち。
山のむこうにある田畑や道、九百九十九段の石段も、鬼がこしらえたものと、村人の気持ちもかわっていきます。そして、鬼たちは神さまではなかったと思い、九百九十九段の上に建つ神社に、三びきの兄弟とその両親をまつります。
それから、いつのころからか、大みそかになると鬼たちがやってきて「うおー、泣く子はいねが~」「なまけ者はいねが~」とさけびます。
村人は、「なまはげ」が、幸運を運んでくる守り神であることを知っていて、来年もきてくれるようつぶやきます。
なまはげには角があるため、鬼と誤解されるが、本来は鬼と無縁の来訪神といいます。
集落ごとに伝承されてきたなまはげのお面や装束は、住民が畏敬の念をこめて手作りしたものだそうですが、版画でなければだせない迫力のあるものになっています。
早川さんの制作過程がYouTubeで見られました。
この伝統行事にはさまざまな困難があるようですが、何とか継続してほしいものです。