スー族の話を絵本にしたもの。スー族というと、西部劇で第7騎兵隊を全滅させたインディアンとして映画などにたびたび出ていた(といっても最近ではあまり西部劇そのものを見る機会も少なくなっているが)。この戦いが明治9年のこと。
・イクトミと大岩(アメリカ・インディアンの民話1 ポール・ゴブル・作 倉橋由美子訳/宝島社/1993年初版)
イクトミはおしゃれをして隣村の友だちや親類をたずねます。日が高くなり、暑くなったので大きな岩の陰で休み、もってきたブランケットがじゃまになり、岩の日除けのためにかけてあげます。
しかし、雷雲がむくむくと集まってきたので、「上等のブランケットを岩に着せておくという手はない」と取り返し、降ってきた雨宿りのためにブランケットをかぶります。
しかし、大地を揺るがすような音とともに、大きな岩がはずみながら、すさまじい勢いでイクトミのほうにむかってきます。岩は登れないだろうと丘にのぼっても、川に逃げても、岩はイクトミを追いかけてきて、脚にのしかかってしまいます。様子を見にきたバッファローに助けをもとめ、牛は岩を動かそうとしますが、岩はまったく動きません。ヘラジカ、レイヨウ、熊、プレーリー・ドッグ、小さなネズミまで一緒になって岩をどかそうとしますが、イクトミの脚にのしかかっている岩をどかすことはできません。
夜になってコウモリがやってくると、「この岩は、コウモリのことを、昼日中には顔をだせないほど醜いんだって。逆さにぶら下がっているのは、上と下の区別がつかないからだって。ほかにもいろいろ言っていたよ」と でっち上げた話をします。
次々に集まったコウモリにさらに怒るような話をすると、怒ったコウモリが岩に体当たりし、岩をこなごなにしてしまうと助かったイクトミは、また歩きはじめます。
・イクトミとおどるカモ(アメリカ・インディアンの民話3 ポール・ゴブル・作 倉橋由美子訳/宝島社/1993年初版)
イクトミはパレードで乗る自分の馬をさがしにいきます。しかし馬はなかなかみつかりません。
途中池で楽しそうに泳ぐカモをみつけ、つかまえようとします。ふとい枝をみつけ、ブランケットには草を包みこの荷物を持って池にちかずく。黙って歩くイクトミにカモたちには「イク、止まれよ。なんとかいってくれよ」「何をしょっているだ」と話しかけます。
イクトミは「最新作の歌を仕上げたところでな。パウワウ・パーテイで歌おうってわけさ。みんなこの歌に合わせておどりたくなるぜ」。そのまま行こうとするイクトミにカモたちは何か歌ってくれと頼みます。
やがてカモたちが、池から上がってくると目をつぶってないといけないぞ。目を開けたらその目が真っ赤になってしまうぞと脅かします。
カモたちが輪になって目を閉じて踊り始めるとイクトミはカモの頭を殴りはじめ、何羽か死んだところで、一羽のカモが片目をあけてイクトミのしていることを見てしまいます。
「おい、飛ぶんだ!みんな殺されてしまうぞ」。恐怖にかられてカモは空に飛び立ちます。
イクトミは火をおこし、カモを丸焼きにするため棒をたて、一羽は蒸し焼きのために灰の中に埋めます。 できあがるのをまっていると風がふき、木々がゆれて二本の木がからみあいます。
イクトミは木に登って、二本を引き離そうとするが、そのときに風がやんで、二本の木に挟まれて動けなくなってしまいます。
木をたたいたり、蹴ったりしても木はイクトミを離してくれません。これをみていたコヨーテが、イクトミがおこした火に駆けてきてカモの丸焼きをたいらげてしまいます。
コヨーテは蒸し焼きのカモに真っ赤に焼けたおきをつけて逃げていきます。また風が吹いてきて、やっと二本の木から離されたイクトミは、蒸し焼きのカモを食べますが、真っ赤なおきにめちゃくちゃにとびはね、わめきちらし湖に飛び込ます。
「盗人のコヨーテに追いついて借りをかえすぞ。しっかり仕返してやるぞ」と思いながらイクトミはまた歩き続けます。
色が鮮やかで見ているだけで楽しめる絵本。しかし話のほうは不思議な内容。子どもたちはどんな反応を示しているのか知りたいところです。
ところでこのキャラタクター、トリックスターであるという。「ウィキペディア」によると
<トリックスター>
神話や物語の中で、神や自然界の秩序を破り、物語を引っかき回すいたずら好きとして描かれる人物のこと。善と悪、破壊と生産、賢者と愚者など、全く異なる二面性を併せ持つのが特徴。
時には悪意を持って行動するが、結局は良い結果になることが多い。引っかき回す行動としては、盗みやいたずらというパターンが多い。抜け目ないキャラクターとして描かれることもあれば、愚か者として描かれる場合もあり、時には両方の性格を併せ持つ者もある。文化的に重要な役割を果たしているとき(例えば、火を盗むなど)や神聖な役割をしているときでさえ、おどけてみせたりもする。文化的英雄であると同時に悪しき破壊者であり、あるいは賢者であり悪者など、法や秩序からみれば一貫性を欠いた矛盾する役割が属性である。