「血管機能を診断基準に」来春にも指針 心筋梗塞や脳梗塞など 佐賀大医学部・野出教授ら
2019年1月11日 (金)配信佐賀新聞
佐賀大学医学部循環器内科の野出孝一教授が理事長を務める「日本血管不全学会」が、血管の機能に着目した診断基準の作成に取り組んでいる。血管の異常を原因とする疾患には心筋梗塞や脳梗塞などがあるが、いずれも深刻な後遺症が残る可能性が高い。四つの検査と基準値を示すことで、初期段階での変化を的確にとらえ、発症の予防などにつなげていく。
血管不全は、野出教授らが20年前から提唱している病態で、血管の働きが弱っている状態を指す。血管は一人の血管をつなぎ合わせると地球1周半になる最大で重要な臓器の一つ。心不全などが起きるずっと以前から、血管の働きは少しずつ弱っている。ただ、「血管が弱っている」という状態をどう診断するか、基準がなかった。
診断基準は、国内外のメンバーで構成する作成委員会(野出委員長、15人)が2017年に発足し、作成した。
検査の観点は、血管の一番内側にあり最前線のバリアー「内皮機能」に関連する検査(FMD、RH―PAT)、血管の硬さを見る検査(PWV、CAVI)の大きく二つに分かれる。臨床現場で既に使われている検査で、体を傷つけない。それぞれ正常、境界域、異常値を提言した。
米国の専門誌「Hypertension」の11月号に掲載された。
掲載された論文を基に、同学会は2020年春をめどに、循環器学会と合同で診療ガイドラインを作る。佐賀大学医学部附属病院でも、診断基準を基にした診療を始めていく方針。
野出教授は「診断基準は予防と研究促進、二つの観点から重要」と話す。これまでは基準値がないため、服薬や運動などによる効果を示しづらかった。診断基準が確立すれば、血管の状態を数値に基づいて分かりやすく説明でき、患者の努力が「見える化」される。
野出教授は超高齢化社会での医療費高騰の抑制を念頭に「血管不全という病態があることを多くの人に知ってもらい、先制医療につなげていければ」と語る。