広がる「ロボット手術」 保険適用拡大 出血量や医師負担が減 実績や症例数などで見極め
2019年1月6日 (日)配信西日本新聞
ロボットを使った手術について、公的医療保険の適用対象が胃がんや食道がんなどに拡大されたのを機に、九州でも導入する病院が広がっている。患者の出血量を抑えられ、操作の精度が高く、執刀医の負担は軽いなどのメリットがある。ただ、どんな医師でも安全に使いこなせるわけではなく、患者は見極めが求められそうだ。
福岡市南区の福岡赤十字病院は4月、米国製手術支援ロボット「ダビンチ」の最新型を導入した。以前から保険が適用されていた前立腺がんと腎臓がんに加え、新たに適用された胃がんと直腸がんの手術を始めた。今月10日現在、胃8例、直腸10例など計36例を実施。年内に肺がんも手掛ける予定だ。
ダビンチは操作台、カメラ、アームからなる。医師は患者がいる手術台から少し離れた操作台に座り、3D画面をのぞき込みながら、指にはめたリングや足を乗せたペダルでアームを操作。アームに取り付けた鉗子(かんし)などを患者の体内に挿入し、手術する。
消化器外科専門の永井英司副院長によると、患部の視界が良く、鉗子が360度自由に動き、細かな処置が可能。開腹手術に比べ、アームを差し込む数センチの穴を数カ所開けるだけで済むため、出血量は少なく、合併症のリスクも軽減される。ただ、触感は伝わりにくく、強く動かしすぎると傷つける危険もある。
福岡赤十字病院では、保険適用となるがんで早期の患者に、開腹、内視鏡、ロボットの三つの手術法を説明。大半がロボットを選ぶという。胃や直腸の場合、患者の痛みなどは内視鏡とそれほど変わらないが、執刀医の負担は大幅に軽くなる。永井副院長は「何時間も立ちっぱなしが通常だったが、座って操作できる。体力も集中力も続く」と、手術の質向上に期待する。
ロボット支援手術は今春の診療報酬改定で、心臓の弁形成など12の術式や疾患が新たに保険適用となった。患者負担は高額療養費制度の上限額(年齢や所得によって異なる)に収まり、内視鏡手術と変わらない。
2016年4月にダビンチを購入した原三信病院(福岡市博多区)は、前立腺と腎臓に加え、今春からぼうこうがんの手術にも活用している。泌尿器科の横溝晃主任部長は既に計450例近くを手掛けており「高画質の画面で細かな操作ができ、尿道や尿管をつなぐなど繊細な手術に向く」と、さらに対象疾患が拡大することを期待。「今後はロボット手術が主流になるだろう」と話す。
日本ロボット外科学会(事務局・東京)によると、全国で300台程度が導入されている。現在は米国製のダビンチのみだが、今後は国産の開発も進む見通し。
ただ、名古屋大病院で10年、胃がん患者の手術で誤って膵臓(すいぞう)を傷つけ、死亡させる事故が起こるなど、安全が保証されているわけではない。関連学会は、導入に当たり、一定の手術実績がある医師の常勤、定められた期間のトレーニングを受けるといった厳しい条件を課している。
日本ロボット外科学会理事で、ニューハート・ワタナベ国際病院(東京)の石川紀彦ロボット外科部長は「車の運転と同じように技術の差がある。内視鏡手術などの手術ができてのロボット支援手術。下手な人が急にうまくなるわけではない。各病院が公開している実績、症例数などを参考に見極めてほしい」と話す。その上で「全てで効果的なわけではなく、個々の症状、タイプなどに応じて使えるかどうかが決まる。主治医とよく相談しつつ、セカンドオピニオンなどで選択肢を確認するといい」としている。
2019年1月6日 (日)配信西日本新聞
ロボットを使った手術について、公的医療保険の適用対象が胃がんや食道がんなどに拡大されたのを機に、九州でも導入する病院が広がっている。患者の出血量を抑えられ、操作の精度が高く、執刀医の負担は軽いなどのメリットがある。ただ、どんな医師でも安全に使いこなせるわけではなく、患者は見極めが求められそうだ。
福岡市南区の福岡赤十字病院は4月、米国製手術支援ロボット「ダビンチ」の最新型を導入した。以前から保険が適用されていた前立腺がんと腎臓がんに加え、新たに適用された胃がんと直腸がんの手術を始めた。今月10日現在、胃8例、直腸10例など計36例を実施。年内に肺がんも手掛ける予定だ。
ダビンチは操作台、カメラ、アームからなる。医師は患者がいる手術台から少し離れた操作台に座り、3D画面をのぞき込みながら、指にはめたリングや足を乗せたペダルでアームを操作。アームに取り付けた鉗子(かんし)などを患者の体内に挿入し、手術する。
消化器外科専門の永井英司副院長によると、患部の視界が良く、鉗子が360度自由に動き、細かな処置が可能。開腹手術に比べ、アームを差し込む数センチの穴を数カ所開けるだけで済むため、出血量は少なく、合併症のリスクも軽減される。ただ、触感は伝わりにくく、強く動かしすぎると傷つける危険もある。
福岡赤十字病院では、保険適用となるがんで早期の患者に、開腹、内視鏡、ロボットの三つの手術法を説明。大半がロボットを選ぶという。胃や直腸の場合、患者の痛みなどは内視鏡とそれほど変わらないが、執刀医の負担は大幅に軽くなる。永井副院長は「何時間も立ちっぱなしが通常だったが、座って操作できる。体力も集中力も続く」と、手術の質向上に期待する。
ロボット支援手術は今春の診療報酬改定で、心臓の弁形成など12の術式や疾患が新たに保険適用となった。患者負担は高額療養費制度の上限額(年齢や所得によって異なる)に収まり、内視鏡手術と変わらない。
2016年4月にダビンチを購入した原三信病院(福岡市博多区)は、前立腺と腎臓に加え、今春からぼうこうがんの手術にも活用している。泌尿器科の横溝晃主任部長は既に計450例近くを手掛けており「高画質の画面で細かな操作ができ、尿道や尿管をつなぐなど繊細な手術に向く」と、さらに対象疾患が拡大することを期待。「今後はロボット手術が主流になるだろう」と話す。
日本ロボット外科学会(事務局・東京)によると、全国で300台程度が導入されている。現在は米国製のダビンチのみだが、今後は国産の開発も進む見通し。
ただ、名古屋大病院で10年、胃がん患者の手術で誤って膵臓(すいぞう)を傷つけ、死亡させる事故が起こるなど、安全が保証されているわけではない。関連学会は、導入に当たり、一定の手術実績がある医師の常勤、定められた期間のトレーニングを受けるといった厳しい条件を課している。
日本ロボット外科学会理事で、ニューハート・ワタナベ国際病院(東京)の石川紀彦ロボット外科部長は「車の運転と同じように技術の差がある。内視鏡手術などの手術ができてのロボット支援手術。下手な人が急にうまくなるわけではない。各病院が公開している実績、症例数などを参考に見極めてほしい」と話す。その上で「全てで効果的なわけではなく、個々の症状、タイプなどに応じて使えるかどうかが決まる。主治医とよく相談しつつ、セカンドオピニオンなどで選択肢を確認するといい」としている。