【福岡】「感染かも」発熱外来患者が殺到、検査希望…キット品薄 予約断ることも
2022年1月31日 (月)配信読売新聞
感染力が強い新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の流行で、医療機関の発熱外来が患者であふれる事態になっている。発熱して感染を疑う人が増えるとともに、保健所の業務逼迫で濃厚接触者かどうかを各自で判断するようになり、自主的に検査を希望する人が殺到しているためだ。自宅療養者への往診依頼もあり、医療機関からは悲鳴が上がる。(手嶋由梨、田中浩司)
重い負担
28日午後、福岡市城南区にある武田病院の駐車場で、防護服姿の医師や看護師が発熱を訴えて車内で待機する患者に窓越しで検体採取や問診を行っていた。約15分後に検査結果を本人に伝えると、すぐに次の車が入ってきた。
同病院では平日午後に限り、発熱外来を設置している。発症後の日数に応じて抗原検査とPCR検査を使い分けても1日に検査できるのは12人が限界だ。
福岡県内で新規感染者が連日、過去最多を更新したここ1週間ほどは特に検査希望の電話が殺到する。だが、数十人は断らざるを得ない状況となっており、検査した人の中には数日前から症状がありながら検査を受けられなかった人がいたという。
通常業務と併せて感染者情報を保健所に伝えるためのパソコンでの入力作業は、毎回深夜に及ぶ。武田卓院長は「小さな病院には負担が大きい。燃え尽きつつある」と危機感をにじませる。
調査を縮小
発熱者や濃厚接触者に対応している福岡リハビリテーション病院(福岡市西区)でも、予約の電話が鳴りやまない。目立つのは「職場の人が感染し、濃厚接触者になったかもしれない」との内容だ。
背景には福岡県や福岡市の保健所が今月19日以降、濃厚接触者を特定する「積極的疫学調査」を縮小したことがある。企業や学校では感染者が出ても保健所は調査せず、濃厚接触者の判断は本人や事業所に委ねられることになった。
感染の不安から無症状でも検査を希望する人が増えた一方で、PCR検査キットは品薄でまとまった入手が難しい。柏木紀理子・入退院支援センター看護課長は「予約を断ることも多く心苦しい。こんな状況は初めて」と困惑する。
佐賀、長崎、宮崎県でも、保健所の人手を感染者の経過観察に集中させるため、濃厚接触者の調査を同居家族や重症化リスクのある施設に限定する運用に変更した。
往診依頼も
自宅療養者への往診の依頼も出てきている。むたほとめきクリニック(福岡県久留米市)は今月、6件の依頼を受けた。28日にも保健所から発熱症状がみられる80歳代夫婦宅への往診を急きょ依頼され、夕方になって急いで訪問した。夫は心不全などの基礎疾患があり、解熱剤とコロナ用の飲み薬「モルヌピラビル」を処方するなどして対応した。
同クリニックの発熱外来は1日約20人を検査している。現在は6~7割が陽性となっているといい、その診療にも追われている。牟田文彦院長は「このままでは、必要な人に迅速な検査や診療ができなくなる恐れがある。発熱やのどの痛みといった症状が出たときに、発熱外来に来るようにしてほしい」と呼びかける。