大阪の保健所、機能不全に 感染の実態把握に支障
新型コロナウイルスの感染が拡大する大阪市で保健所業務が事実上、機能不全に陥っている。感染者情報のシステム入力が大幅に遅延し、外部委託を検討したが、契約前に作業を始めさせる「あり得ないミス」(自民党市議)が発生した。クラスター(感染者集団)の調査にも手が回っておらず、感染実態の把握に支障が出ている。
最初に明らかになったのは、感染者情報を集約する政府のシステム「HER―SYS(ハーシス)」への入力漏れだ。1月下旬から2月上旬にかけ、業務逼迫(ひっぱく)で作業が追い付かず、1日当たり最大4700人分が計上されていなかった。遅れは計約2万2千人分に及び、市のウェブサイトでも日々の感染状況が更新できない状況が続いた。
市は再発防止のため入力作業を委託する方向で検討。だが発注を急ぐあまり、契約手続きが完了する前から業者に作業させていたことが判明した。委託料の見積もりは、書面ではなく業者から口頭で伝えられた「言い値」で計算していた。
17日の市議会では「契約書や(業務)指示書もなく、金額の妥当性もチェックしていない。むちゃくちゃだ」と厳しい批判が上がり、松井一郎市長は18日、報道陣の取材に「市民の信頼を損なうものでおわび申し上げる」と陳謝した。
しわ寄せは感染対策の要となる疫学調査にも及ぶ。市は直近1カ月間で、高齢者施設110カ所、計1777人の感染者を把握しているが、1カ所で5人以上のつながりのあるクラスター認定に必要な調査は人手不足で実施できていない。大阪府の集計にも反映されておらず、データの信頼性も揺らいでいる。