インフルエンザ 今季も低水準…コロナ対策奏功か
インフルエンザの今季(昨年9月以降)の感染報告が、過去最少だった昨季に続き、極めて低い水準で推移している。シーズン前には、昨季感染して免疫を得た人が少なかったことを理由に大流行も予測されていた。コロナ禍での感染対策強化に加え、幼児の保護者らの意識変化も流行を抑えた理由の一つとみる専門家もいる。(山崎光祥)
インフルエンザにかかれば一定の免疫がつくとされるが、昨季は感染者が極端に少なかった。このため、日本感染症学会は昨年9月、「社会全体の集団免疫が形成されていない。海外からウイルスが持ち込まれれば大流行を起こす可能性もある」との見解を公表。重症化しやすい高齢者らだけでなく、全国民に積極的なワクチン接種を訴えた。
だが、例年なら流行のピークとなる1月下旬~2月上旬を迎えても、感染拡大はみられていない。
厚生労働省によると、1月30日までの1週間に全国約5000の医療機関から報告された患者数は55人(1医療機関あたり0・01人)。新型コロナウイルス感染症との同時流行が危惧された昨年同期の64人(同0・01人)と同水準で、現行の集計方法になった1999年以降で最多だった2019年同期の28万3388人(同57・09人)を大きく下回った。
感染者が少ない理由について、厚労省はコロナ禍で習慣として根付いたマスク着用や手洗い、手指消毒に加え、水際対策の強化で海外との往来が減ったことなどを挙げる。
これに加え、幼児の感染報告の少なさに着目するのは、全国の医師200~400人が参加するインフルエンザ感染例の集計システムを20年余り運営し、流行状況を分析してきた 西藤さいとう 小児科(滋賀県守山市)の西藤成雄院長だ。「幼児はマスク着用や手洗いを徹底しにくいため、流行抑制には別の要因もあるのではないか」と指摘する。
西藤院長によると、これまでは37・5度程度の発熱なら保育園や幼稚園に通わせる保護者が多く、園内で感染が広がり、自宅で家族にうつるケースが目立った。
しかし、最近は早めに休ませたり、早退させる場合は仕事を中断して迎えに行ったりする保護者が増えている。発熱時の対応に関する家庭や教育現場、職場の理解が進み、流行初期の感染拡大防止につながったのではないか、と推測する。
西藤院長は「今季も大きな流行はないだろうが、新学期には小さな流行が起きることが多く、大型連休まで続く場合もある。警戒を緩めないように」と呼びかけている。