第6波 疫学調査追い付かず 出雲保健所・中本所長 全数把握の見直し望む
出雲保健所(出雲市塩冶町)の中本稔所長が3日、報道各社の取材に応じ、新型コロナウイルス感染拡大第6波による保健所業務の逼迫(ひっぱく)ぶりを語った。負担軽減のため感染者の全数把握を見直すよう望む心情を明かし疲労感をにじませた。
出雲市内を管轄する出雲保健所の職員は47人で、第6波以前から感染症対策担当者以外も含め、対応してきた。第5波までの経験から1日10人程度の新規感染者なら問題なく対応できていたという。
ところが、出雲市内では25日ぶりに新規感染者が確認された昨年12月27日以降、今年1月31日までに元日を除き連日、新規感染者を確認。この間の累計感染者数は696人に上った。特に1月17日からの1週間は新規感染者数が30~70人台で推移し、最も多い日は73人。中本所長は「オミクロン株の感染力の強さと速さを感じた。想定以上の数が出てきた」と話す。
1月17日からの1週間は、濃厚接触者の特定や自宅療養者の健康観察などの業務が多忙となり、疫学調査が一時追い付かなくなった。職員総出はもとより、島根県や市などから計35人の応援を受け、疫学調査結果の入力作業などを任せることで乗り切った。
業務の簡略化も進めた。感染者の行動歴について過去2週間までさかのぼって調べていたのを5日間に短縮し、感染者が確認された学校や施設の調査では、保健所職員による検体採取を学校や施設に委ねた。
中本所長は、全国的に感染者が激増する中、季節性インフルエンザなどのように感染者の定点把握ではなく、全数把握が求められる現状に言及。「感染者全数の把握を続ける限り、保健所は厳しい状態が続く。ただ、全数把握をやめるには、開業医が安心して患者を診られる仕組み作りが必要だ」と苦悩を口にした。