コロナ感染最多、岩手県内の医療が再び危機 看護師らの欠勤が相次ぐ
新型コロナウイルスの流行「第8波」が続く岩手県内で、医療体制の逼迫(ひっぱく)の度合いが増している。救急や高度医療を担う基幹病院は看護師らの欠勤が相次ぎ、やむなく病棟の受け入れや緊急性の低い手術を一時的に停止。発熱外来に応じる診療所もフル回転の状況が続く。岩手医大付属病院など盛岡医療圏の4病院長は13日、緊急記者会見し「さらに状況が悪化すれば救える命が危うくなる」と警戒感を強め、年末年始を控えて県民に感染対策徹底への理解を求めた。
「がん患者の手術入院を待ってもらう。とんでもないことが現実に起こっている」。同大付属、県立中央、盛岡赤十字、盛岡市立の4病院長は同日、県庁でそろって会見に臨み、医療体制の厳しい現状に強い危機感を示した。
県内の13日の病床使用率は40・7%。病床が埋まる状況ではないが、医療機関は第7波と同様にクラスター(感染者集団)や人手不足の対応に追われ、一般診療にも支障が出ている。
岩手医大付属病院は今月、クラスターで三つの病棟や集中治療室が使用できなくなり、重篤患者を受け入れる3次救急を初めて一時停止した。周産期を除く定期手術や予定入院は現在も停止したままだ。
県民の「命のとりで」ともいえる同病院だが、50人以上が出勤できない状況で医療スタッフが奮闘。小笠原邦昭院長は「状況を改善させようと職員は一生懸命頑張っている。現場の現状を分かってほしい」と訴えた。
中央病院では40人前後の欠勤が続く。一部の病棟では新規入院などを停止。優先で取り組むがん治療に対し、宮田剛院長は「手術を抑制せざるを得ない事態にある。患者には大変申し訳ないが、それほどの状況にあると受け止めてほしい」と述べた。
盛岡赤十字病院(久保直彦院長)、盛岡市立病院(加藤章信院長)も同様に看護師らが不足。県南部の医療機関でも診療制限が生じ、リハビリなどを担当する医療機関の受け入れも滞っている。県医療局によると、12日時点の診療制限は6病院、欠勤は6日時点で206人に上る。
感染拡大が続き、市民も警戒感を一段と高める。県内で過去最多となる2515人の感染が発表された13日、盛岡市中心部のドラッグストアでは抗原検査キットが品切れになる店もあった。
家族が罹患(りかん)し、検査キットを購入した滝沢市の40代会社員男性は「会社でも感染者が出ており、年末年始まで感染が高止まりする状況が続くのではないか。県外の実家への帰省は諦め、基本的な感染対策を徹底したい」と気を引き締める。