温泉クンの旅日記

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唐津城

2011-04-17 | 旅エッセイ
  <唐津城>

 宿選びは難しい。
 宿賃はできるだけ安いほうが嬉しいが、それでも小満足程度のサービスでいいから提供してほしいものだ。

 ひと昔前のころ、公共系の宿はたいてい、どうにもこうにもまったく融通がきかなかった。
 フロントといえば役所の窓口なみの対応である。
 チェックインは三時からといったら、これは三時ジャストを意味していて二時に到着しようものならロビーで延々と待たされた。

 食事も午後六時から八時までの間となると、渋滞などで到着が遅れたりして七時到着になろうものなら、着替えもせずに荷物だけを置いたら慌てて食堂に向かわねばならなかった。
 お客のほうが宿で決めたルール(規則、約款)をきっちりと守らねばいけない、そんな雰囲気があったのだ。

 最近はだいぶ事情が変わってきて、公共宿も客本位のサービスを心がけるようだ。
 喜連川温泉の公共系の宿に泊まった冬の朝、一階の食堂で朝食をとっているときだった。ガラス張りの向こうが駐車場になっていて、長靴を履いた宿のひとが凍りついた車を一台一台、フロントガラスにバケツに汲んだ温泉かお湯をかけて専用ブラシを使って清掃しているのが見えて「うーん、やるものだな・・・泣かせるじゃないか」と感心したことを思いだす。

 唐津で泊まるのはその公共系の宿、国民宿舎である。



「本日宿泊のものですが、台風のために到着が早くなってしまいました」
 フロントの女性にそう言うと、壁の掛け時計を振り返った。時計の針は一時四十五分を指している。

「恐れ入りますが、チェックインは三時からとなっておりますので・・・・・・」
 そんなことは百も承知、わかっている。
 まあ普通並みの宿ならこれでフロンとから指令が飛び、到着済みの客が宛がわれている部屋の準備が優先される、それを見込んでいるのだ。

『本日は大型台風が佐賀県をかすめて午後早い時間帯に福岡県に上陸するとの予報になっています。ドタキャンの電話と、観光をあきらめた早い到着客が見込まれます。
 台風のなかわざわざお見えになっていただいたありがたいお客さまです。お待たせしないよう部屋の清掃は早めにしっかりと遺漏ないように済ませてください。
 フロントも適宜柔軟に気配りしてお客さまに対応してください。キャンセルについては厨房にも都度連絡をお願いします。またそれぞれ交代時にはその旨しっかり引き継いでください。ではみなさん、今日も一日よろしくお願いいたします』
 わたしが責任者だったら、朝一番のミーティングでこういうだろう。

 とにかく早すぎる到着は台風のせいとはいえこちらの都合なので、ロビーのソファで文庫本を読みだす。そのうち煙草を吸いたくなったので荷物を持ち、車で待機することにした。

 ジツは、これでも唐津でかなり時間を潰してからホテルに向かったのだった。
 からつバーガーを食べてから、ホテルの位置を確認すると唐津駅に向かった。



 駅のコインパーキングに車を停めて、街をぶらぶらと散策して喫茶店で珈琲を飲んだ。すこしばかりの時間、文庫本を読んでいたのだが、客がわたしひとりだけで誰も入ってこないので居づらくなってしまう。
 駅に戻り、壁に掲げられた近辺の地図を見入った。
 唐津城が近い。そこに行くことにした。
 駅のそばに「五足の靴文学碑」があった。この碑には九州のあちこちで出逢ってしまう。



 唐津城は、唐津湾に注ぐ松浦川の左岸、満島山に江戸時代初期の慶長7年(1602年)に初代藩主寺沢広高によって築城された。
 連郭式の平山城で、北面は唐津湾に面するため海城ともいわれる。満島山を中心に鶴が翼を広げたように見えることから別名は舞鶴城とも呼ばれる。



 天守閣だが、鉄筋コンクリート製の模擬の天守閣である。
 ほかに現存するものとしては石垣、堀、再建された櫓や門などである。



 初代藩主によって築かれた防風林、「虹の松原」が見える。



 天守に続く階段のところに猫がいっぱいいた。





 どうやら、毎日食事の世話をしているひとがいて、そろそろその時間らしい。あるいは、そのひとを猫が感知して集まっているのかもしれない。
 その猫を撮っているひともいた。




 そんな一日を思いだしているうち、やれやれ、そろそろチェックインの三十分前である。

(助さん、格さん、もぉーいいでしょう!)
 思わず呟いてしまう。

 また、荷物を持って車を降り、玄関をはいってロビーのソファに座る。
(いい加減、チェックインを始めんかい!)
 文庫本を形ばかり読むふりをするが、すぐに名前を呼ばれるだろうから、猫のように耳はフロントのほうに向けておいた。

 結局、チェックインは三時からであった。しかも、こんなに待っていたのに自分から行かねば気がついてもくれなかった。

 適宜で柔軟な対応なんて、なーんもない。くそっ、木っ端役人たちめ。
 ある意味、珍しく貴重な宿である。(もう二度と行かんし絶対ひとに勧めんけどね)


 →「からつバーガー」の記事はこちら
 →「一足のくつ」の記事はこちら
 →「門司港界隈(4)」の記事はこちら

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