温泉クンの旅日記

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香嵐渓の五平餅

2011-04-13 | 食べある記
  <香嵐渓の五平餅>

 なんともはや<趣>のありすぎるほどの茶店である。



 喫煙者のためにだろう、外にも灰皿を用意した席が設えてあった。
 竈もなかなかいい味を醸し出している。



 ここは香嵐渓にある、檜茶屋である。

 香嵐渓は愛知県豊田市の足助町、矢作川の支流である巴川沿いの渓谷であり紅葉の絶景地として名高い。
 飯盛山にある香積寺(こうじゃくじ)の三栄和尚という坊さんが、寛永11年(1634年)のころに巴川から寺へと続く参道に楓の木を植えたのが始まりとされていて、その後地元の人達の手によって多くの楓が植え足され、散策道がつくられた。



 現在の楓の総数は四千本余り、秋には紅葉と黄葉が清流に見事に映えるという。そのころはこのあたりの道は連日大渋滞になるそうだ。
 桜でも咲いてればいいなと思って来たのだが、楓ばかりではしょうがない。



 それでも、カタクリの花の群生が観られる季節に訪れられたというのは運がよかったのであろう。



<香嵐渓(こうらんけい>という、どうにも洒落た名前の由来だが、

   飯盛山からの薫風は、香積寺参道の青楓を透して巴川を渡り、
   香ぐわしいまでの山気を運んでくる。山気とは、すなわち嵐気也

 というところから命名されたという。名付けたのは大阪毎日新聞社社長で、昭和5年(1930年)というからそれほど古くはない。

 昼時で、わたしも腹がすいた。
 客たちを見回すと、スパッと切った竹筒をそのまま風流な丼にした汁蕎麦がいかにも旨そうで、わたしついつい珍しく笊蕎麦でなく温かいとろろ蕎麦を注文して前払で金を払う。
 外の席で喫煙したいところだが、せっかくだから趣のある茶店の中の席を選んだ。



 運ばれてきた竹筒の丼の蕎麦をひとくち啜りこんで、すぐにガックリ肩を落とした。それに寝惚けた味の蕎麦つゆである。
(うむぅ・・・これは、見た目ほどぜんぜん旨くない・・・それに、なによりこの蕎麦だけでは量が足りんな・・・・・・)



 廻りのテーブルでは、サイドメニューで「五平餅」が大人気なようで、思いきって追加注文をした。
 思いきって、といったのは、わたしの苦手な甘いだけの五平餅が多いからである。



 五平餅は実際に目の前にすると、思ったより大きいものだった。
 木曽の辺の五平餅は串団子状で食べやすくて割と好きだが、小判状のものは実のところ甘いだけのものが多いので敬遠していた。だから、本当に初めてなのだ。
 恐る恐る、齧る。

(・・・・・・こいつは、いける!)
 たれは味噌ベースだ。
 ふつう五平餅のたれのなかには胡麻とか胡桃・ピーナッツとか荏胡麻みたいな細かなものが入っている。



 抑えた甘みと、たぶん山椒が散りばめられているのだろう「ピリ辛」がなんとも爽やかである。
 まず食べやすい板串から出た部分をガツガツ食べて、ととろ混じりの蕎麦ツユで流し込むと、板についた部分を箸でこそげ落として、大事にゆっくり食べる。
 ・・・・・なんともうめえ。

 小判状の五平餅でも旨いものは旨い。
 またひとつ食わず嫌いが香嵐渓で治ってしまったのであった。


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