<安芸の宮島(1)>
日本三景のひとつ、安芸の宮島である。
古くからこの島自体が信仰の対象だったという。人口二千人に満たない宮島に、訪れる観光客は年間三百万人を超える。
渡るのはこれが三度目だ。
機動的な小型のフェリーで、本土側と宮島側がほぼ同時に出発してすれ違う。片道料金が東京の地下鉄の初乗り運賃と同じぐらい、と安い。
船が嫌いなわたしでも、瀬戸内海の穏やかな海をこのフェリーは目の前の宮島までたった十分ほどで渡してくれるからまったく平気なのだ。
中間地点あたりで、JRのフェリーとすれ違った。
・・・四月三十日の金曜夜、仕事から帰ってすぐに西に向けて旅立ったのだったが、東名高速は渋滞だらけだった。旅の目的地は下関、あわよくば門司との心づもりであった。
神奈川県から静岡県にはいって、まず19キロの渋滞に巻き込まれた。渋滞嫌いのわたしも覚悟していたので、これはなんとかクリアできた。日取りのいいゴールディンウィークと、早ければ六月には「千円高速」が終わりそうな世相で、表通りの東名高速は大渋滞だろうとは誰にでも予想できる。
続いて浜名湖を過ぎて愛知県にはいったところで、35キロの渋滞でがっくりきた。深夜である。たしかに岡崎あたりはいつきても渋滞するところではあるが、あまりにも長すぎる。でも、しんどかったがこれもなんとかクリア。
早朝、京都にはいったところで、京都南ICから45キロ渋滞の表示をみて、あっさり投げた。もう、だめだ、これ以上はいやだ。渋滞が切れる距離だけ下道を走ろう。
(目的地が門司とか下関は、無謀だったか・・・)
まあ、いい。今日の夕方、四時ごろにいる場所に目的地を変更だ。高速が通常の状態であれば、別府とか久留米までいけるはずなのだが、まず無理だろう。
それで広島に変更したのだった。仮眠二回、合わせて一時間でもこんなに時間がかかってしまった。広島から、ただ帰るのも馬鹿みたいなので宮島観光というふうになったのである。
傾きかけた日差しで、海がきらめいていた。日が長くなったものだ。
フェリーの左側に目を転じれば、海の向こうに広島の市街地が広がっている。
赤い大鳥居に近づいてくると、引き潮の浜に無数のひとがいた。きっと潮干狩りをしているのだろう。このフェリーが着いたときにアサリのはいった袋を持ったひとを何人かみかけた。
到着して、飲食店や土産物屋がひしめく通りに向かった。
厳島神社は、その通りを抜けた奥にあるのだ。宮島に来た観光客で厳島神社にいかないひとはまずいない。往復するので、必ずや金が落ちるという寸法だ。共存共栄か。
水族館は工事中らしく観光シーズンなのに休みとのことである。人気者の「スナメリ」が会社の上司のひとりにそっくりで爆笑したことを懐かしく思いだす。あのときは、高所恐怖症のわたしが、もう来られないかもしれないと思い、意を決してロープウェイにも乗ったのだった・・・な。
可愛い鹿を、いたるところでみかける。奈良の鹿よりはだいぶおとなしそうで、人懐っこい。
あちこちの店先で焼いている牡蠣が、なんとも香ばしい匂いをふりまいて観光客の胃袋を誘惑する。よし、帰りに食べるぞ。わたしは宮島という言葉で、この焼き牡蠣をまず思いうかべてしまうのだ。
揚げもみじ饅頭の店も何軒かあり、そこそこの客が群がっていた。
横目で並ぶ店をチェックしながら、厳島神社の入り口に辿り着いた。
- 続く -
→「天橋立(1)」の記事はこちら
→「天橋立(2)」の記事はこちら
日本三景のひとつ、安芸の宮島である。
古くからこの島自体が信仰の対象だったという。人口二千人に満たない宮島に、訪れる観光客は年間三百万人を超える。
渡るのはこれが三度目だ。
機動的な小型のフェリーで、本土側と宮島側がほぼ同時に出発してすれ違う。片道料金が東京の地下鉄の初乗り運賃と同じぐらい、と安い。
船が嫌いなわたしでも、瀬戸内海の穏やかな海をこのフェリーは目の前の宮島までたった十分ほどで渡してくれるからまったく平気なのだ。
中間地点あたりで、JRのフェリーとすれ違った。
・・・四月三十日の金曜夜、仕事から帰ってすぐに西に向けて旅立ったのだったが、東名高速は渋滞だらけだった。旅の目的地は下関、あわよくば門司との心づもりであった。
神奈川県から静岡県にはいって、まず19キロの渋滞に巻き込まれた。渋滞嫌いのわたしも覚悟していたので、これはなんとかクリアできた。日取りのいいゴールディンウィークと、早ければ六月には「千円高速」が終わりそうな世相で、表通りの東名高速は大渋滞だろうとは誰にでも予想できる。
続いて浜名湖を過ぎて愛知県にはいったところで、35キロの渋滞でがっくりきた。深夜である。たしかに岡崎あたりはいつきても渋滞するところではあるが、あまりにも長すぎる。でも、しんどかったがこれもなんとかクリア。
早朝、京都にはいったところで、京都南ICから45キロ渋滞の表示をみて、あっさり投げた。もう、だめだ、これ以上はいやだ。渋滞が切れる距離だけ下道を走ろう。
(目的地が門司とか下関は、無謀だったか・・・)
まあ、いい。今日の夕方、四時ごろにいる場所に目的地を変更だ。高速が通常の状態であれば、別府とか久留米までいけるはずなのだが、まず無理だろう。
それで広島に変更したのだった。仮眠二回、合わせて一時間でもこんなに時間がかかってしまった。広島から、ただ帰るのも馬鹿みたいなので宮島観光というふうになったのである。
傾きかけた日差しで、海がきらめいていた。日が長くなったものだ。
フェリーの左側に目を転じれば、海の向こうに広島の市街地が広がっている。
赤い大鳥居に近づいてくると、引き潮の浜に無数のひとがいた。きっと潮干狩りをしているのだろう。このフェリーが着いたときにアサリのはいった袋を持ったひとを何人かみかけた。
到着して、飲食店や土産物屋がひしめく通りに向かった。
厳島神社は、その通りを抜けた奥にあるのだ。宮島に来た観光客で厳島神社にいかないひとはまずいない。往復するので、必ずや金が落ちるという寸法だ。共存共栄か。
水族館は工事中らしく観光シーズンなのに休みとのことである。人気者の「スナメリ」が会社の上司のひとりにそっくりで爆笑したことを懐かしく思いだす。あのときは、高所恐怖症のわたしが、もう来られないかもしれないと思い、意を決してロープウェイにも乗ったのだった・・・な。
可愛い鹿を、いたるところでみかける。奈良の鹿よりはだいぶおとなしそうで、人懐っこい。
あちこちの店先で焼いている牡蠣が、なんとも香ばしい匂いをふりまいて観光客の胃袋を誘惑する。よし、帰りに食べるぞ。わたしは宮島という言葉で、この焼き牡蠣をまず思いうかべてしまうのだ。
揚げもみじ饅頭の店も何軒かあり、そこそこの客が群がっていた。
横目で並ぶ店をチェックしながら、厳島神社の入り口に辿り着いた。
- 続く -
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