温泉クンの旅日記

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「ほっとゆだ」ら辺 岩手・湯田温泉郷

2007-01-03 | 温泉エッセイ
  < 白日夢 >

 ひとは人生で、いったいなんど「駅」のお世話になるのだろう。

 毎日の通学や通勤。誰かを迎えにいく。誰かを見送る。別れる。待ち合わせる。
ベンチで眠り込む。駅で泣いたり、笑ったり。
 そうして、駅から旅にでる。
 高速道路で温泉があるところもあるが、温泉がある鉄道の駅もいくつかある。
 ずっといってみたい駅の温泉があった。



 ほっとゆだ駅の温泉にはいる。駅舎に並んで、暖簾のさがった温泉棟がある。
だから、温泉だけでもはいれる。駅を利用する乗降客専用ではない。
 テレビでよく紹介されているので知っている人も多いと思う。ここの温泉、名前
としては川尻温泉という。入浴料は二百円と格安である。泉質は、昨日飛び込みで
泊まった岩手湯本温泉「湯本ホテル」と同じナトリウム硫酸塩塩化物泉だが、源泉
温度が60度とすこし低い。が、充分だ。熱めのすっきりするお湯である。



 浴槽は三つあり、子供用、熱め、ぬるめとなっている。
 壁に鉄道用の信号灯があり、

  青色は、列車発車時間の45分前から30分前
  黄色は、30分前から15分前
  赤色は、15分前から発車時間
  無灯火のときはそれ以外

 となっている。
 早く着いての時間待ちの時間で、温泉にはいれる。わたしなどはカラスの行水だ
から、黄色が点灯した時点で服を脱ぎ始めても、まず列車に乗り遅れることはない
だろう。

 まったく、温泉好きにはうらやましい限りの「駅」である。こんな駅が通勤圏に
あれば引っ越したい。通勤の往復に温泉三昧ができる。しかも、たったの百円玉
二枚だ。
 汗を流したあとに飲んだ自動販売機のパックの「ゆだ牛乳」が、なんと50円とは
安くてびっくりしてしまう。ありがたい限り。

 ほっとゆだ駅で汗をながしたあとに、もう一軒温泉のはしごをすることにした。
 十分ほど車を走らせる。
 湯川の奥にある高繁旅館。ナトリウム塩化物硫酸泉。三百円とここも安い。北海
道も安いところが多かったが、今年立ち寄りしたところは、軒並み五百円というと
ころばかりだった。

 一階の大浴場は広く深い。へそぐらいまでの深さだった。露天風呂は、小川に
面した広いが浅めの岩風呂で、お湯の匂いはこちらのほうがよかった。ただし、
二階からもあちらこちらからも、丸見えだった。もともと混浴らしいから、しょう
がない、か。
 ここの売りである、浴槽が金色の「黄金風呂」がまた別にあって、すこぶる効能
があるらしいが、趣味でないので覗いただけでやめておく。



 なんでも、湯が川のように出るところから湯川というらしい。たしかに裏手の
駐車場の端で、大量のおいしそうな源泉が滝のように噴出して、川に流れていた。
 ああ、なんてもったいないナ。モウッ!ため息がでてしまう。
 難破船の船底に金貨銀貨のしこたま詰まった箱をみつけたような、埋蔵金の大判
小判百万両を掘り出したような、心のときめきがおきてしまう。冗談ではなく。

 ジッとみていると、よだれがでて、めまいがしてくる。
(へへへ、捨ててるこのお湯、ぜんぶオレさまがいただくぜ)

 ほ、欲しい。
 このそばに庵を建てて、このお湯をゼヒ引きたい。四六時中、贅沢三昧に温泉が
溢れる檜風呂や露天風呂だ。
 温泉好きなら、しばしそんな「白日夢」をみてしまう光景である。わたしだけで
なく、誰しも。たぶん。

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