ひさびさの海

　　＜ひさびさの海＞

　昨年、一ヶ月半の闘病生活にピリオドを打った海は、二度に渡る手術のために
尻尾の根元部分とお尻の左半分の毛を刈られたことに乙女心をいたく傷つけられて
しまったのだった。



　尻尾などは、まるでアメリカンドックかきりたんぽのよう状態で、チラリと確認
してはため息をついてふさぎこんでいた。



　三ヶ月たって、そんな左半ケツとアメリカンドックもようやく癒えて、画像の
撮影許可もおりたのである。



　後ろ姿でも尻尾はよくよく見ると色がかすかに違うが、まあ完全に元通りになっ
ている。



　温泉若女将ふうの、「ようこそ、いらっしゃいませ」座りもピシッと決まる。
尻が痛かったときは、尻をかばってすこしぎこちなかったのだ。

　寝姿はとても可愛い。
　寝顔を見られまいと、腕で隠している。







　観ていてあきない。

　でも、やはり、目覚めるとその眼光はわたしの心の底の底まで楽々と見通すよう
に、とにかく鋭い。



「申し訳ありません！　わたしがやりました」
　鬼刑事を前にしているようについ言ってしまいそうになるのである。


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