温泉クンの旅日記

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酒と饂飩の日々(1)

2016-12-21 | 食べある記
  <酒と饂飩の日々(1)>

 温泉のお陰でせいぜい風邪を引いても年に一度くらいなのだが、咳と軽い悪寒がして一カ月くらい引きずってしまうのである。 
 京都北山のカフェの寒いテラス席以来、風邪を引きずっている。
 無類の麺好きのわたしだが、風邪を引くとなぜか饂飩に走る傾向がある。食事における饂飩率が大幅にアップしてしまうのだ。

「ヒコサカさん、コショウダイ美味しかった?」
 カウンターのなかから女将が、わたしが入る前から座っていた常連らしい一人客に訊いた。



 釣り好きな主人がやっているカウンターだけの呑み屋で、主人や太公望の客たちが釣ってきた飛びきり新鮮な魚を提供してくれる店だ。時折の利用なので顔は覚えられていない。
「やたら旨い刺身でしたね。とても鯛とは思えないくらいの味で」
 常連はツマだけになった皿を持ちあげる。
 その仕草を横目でみて、黒ムツの刺身を頬張っていたわたしは、ふぅむ、コショウダイは食べたことがないなと思う。というか、こちらにもお勧めしてほしかったな。



「ところで、いつもお醤油つけないで刺身食べるんですね」
 女将が感心したように言う。わたしも若いころ熊本で土地の醤油がまったく合わずに、天然捕れたての新鮮なヒラメの刺身を土地の醤油を使うのはもったいないと使わずに食べたことが一度あるが、あまりお勧めできない。

「昔ね、この刺身を美味しいオイシーと食べていたら先輩に『お前、味音痴かそれ養殖もんだぞ。味が分からないヤツだなあ』って言われてから、こんな食べ方になっちゃってさ」
「ヒコさん、お前さん血圧が高いだけだろが」
 黙って聞いていた店主がギロリと目玉を剥いて喝破した。
「タハ、バレたか」

 熱燗二合の追加と、気になるコショウダイを注文する。恐ろしく寒い夜だったので、芋焼酎の水割りは捨てて熱燗でスタートしたのだった。
 カウンターの届いたコショウダイをひと口食べて目を瞠る。旨い。



(なるほど、くせのない、旨みがしっかりとした味の濃い刺身だ・・・)
 刺身の様子も、ジツに血合いが綺麗な魚である。磯の暴れん坊コショウダイはタイと名付けられているがスズキ目イサキ科に属する。



(それにしても寒い・・・)
 この日の夜の気温は一度五分、厳寒だ。風もあるので体感は零度に近い。暖房しているのだが、店が古いので隙間風が足元に忍びこむのだ。
 カウンターが満席になったのを汐に勘定をしてもらう。丁度、刺身も食べ切り酒も呑みきるところだ。

 隙間風の入らない二軒目に移動し、適当に注文するとトイレに駆け込む。一軒目は一番奥にトイレがあるため、満席になると辿り着くのにエライ難儀するのだった。





 二杯水割りを呑んだところで、締めの酒とカレーうどんを頼んだ。暖かい店なので冷酒でも平気なのがありがたい。

 蕎麦屋とはまるで立ち位置が違う若鯱屋のまったりしているがスパイスのパンチがしっかり効いたカレーうどんである。



 寒い夜にはなによりのご馳走だった。

 冬至の今日、運もまたこの日を境に上昇するという「一陽来復」という考え方を東洋ではする。冬至にはゆず湯もいいが、「ん」のつくものを食べると「運」が呼びこめるそうだ。
 南瓜(なんきん=かぼちゃ)、人参、大根、蓮根、銀杏、金柑、などを運盛りといって縁起をかつぐのである。
 もちろん、饂飩も運盛りのひとつである。ならば今日も喰うか。ミカンをつけて。


  ― 続く ―


   →「秋色の上賀茂神社(2)」の記事はこちら
   →「東品川で名古屋めし」の記事はこちら

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