８番らーめん

　　＜８番らーめん＞

　あれはたしか参議院選挙があった1995年の初夏だった。
　高速道路を富山県にはいったところで降りて、国道8号線を富山方面に走って
いた。

　国道8号線は新潟から日本海沿いに北陸地方を縦断して、富山、石川、福井、
滋賀を通り京都に至る幹線国道で、古くは北国街道とも呼ばれ、京都と北陸を結ぶ
要路であった。

「それでは本日のゲストを紹介します。このたび参院選に立候補することになった
プロレスラーの馳浩さんです」
「こんにちは、馳浩です」
　ＣＤに飽きて、ＦＭ放送に切り替えたところで、知っているプロレスラーの名前
が耳に飛び込んできた。

　わたしは隠れプロレスファンでもあるのだ。プロレスだけでなく格闘技全般だ
が。
　馳浩（はせひろし）はノーザンライト・スープレックスと裏投げを得意技とする
どちらかといえば知性派のレスラーだ。

　運転しながら話を聞いていると、石川県の金沢育ちらしい。
　子どものころ好きだった食べ物はなんですか、みたいな質問があって、
「はちばんらーめんです。きゃべつたっぷりで、あれはとにかく安くて旨い！」

（ん！　はちばん・・・らーめん・・・8番らーめんか！）



　そういえば、国道沿いで何軒もみたような気がする。チェーン店だろうから、
なんとなく食指が動かなかったが、くるまやラーメンの例もあるし試してみるか。
　このての情報は、経験からクチコミが一番信用できると思う。
　そこで、入ってみたのが8番らーめんの最初である。そのときは、馳浩が言って
いた野菜たっぷりのラーメンを食べた。たしかに安くて旨かった。



　国道の名をとって付けられた「8番らーめん」は、昭和42年に石川県加賀市の8号
線沿いの田んぼに誕生し、現在は国道8号線沿いだけでなく東京、埼玉や海外にも
進出している。そういえば能登半島のなかにもかなりの数をみかけた。

　それから8号線を通るたびに８番らーめんで何回か昼食とった。たいていは富山
県が多い。もちろん、食べるのはここのメインメニューの「野菜らーめん」。

　今回もいつものように富山県の8号線沿いの店だ。



　ただ趣向を変えて、昔懐かしい中華そばと餃子である。



「ハチカマ」と呼ばれる、数字の「8」がついた可愛らしい蒲鉾は8番らーめんの
象徴だ。
　しつこいようだが、とにかく安いわりにかなり旨いのだ。