温泉クンの旅日記

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水沢観音 群馬・伊香保

2011-05-04 | ぶらり・フォト・エッセイ
  <水沢観音と水沢うどん>


 東京方面から草津温泉へいくと、伊香保温泉は通り道である。

(寄って温泉饅頭でも食べていくか・・・)



 朝食をすませているので、伊香保温泉の階段の上にあるいつもの「勝月堂」で、温泉饅頭をバラで買って店の前の床几台に腰かけていただく。
 できれば土産でひと箱欲しいが、ここの温泉饅頭は日持ちがしないのである。
 真っすぐ草津に向かうにはまだ早い時間である。そういえば水沢観音(水澤観世音)には行ったことがないな。

 水澤観音に向かう道沿いには、満開を過ぎたばかりの桜並木がずらりと並んでいて吃驚する。車を止めて見物しているひともいた。たいした高地でもないと思うのだが、やはり所変われば春の訪れる足並が違うのだろう。



 坂東(関東八カ国)三十三番札所の第十六番目の札所、天台宗「水澤観世音」である。由緒があり古より参詣客が多い。
 この観音様は江戸へ三十六里、日光へ三十六里、善光寺へ三十六里、というなんともありがたいロケーションだ。

 朝が早いのか、参詣客は少ない。大震災の影響かもしれない。

 観世音菩薩は観自在菩薩ともいい、苦しみ悩める衆生の声を聞くとそのひとと同じ姿に身を変え(変化身)、そのひとに最も相応しい教えを授け、救いを与える。
 その変化身の数は「三十三」とされ、各地に三十三観音霊場巡りがあるという。
 因みに、わたしの生まれた横浜の弘明寺にある観音様は、坂東三十三番札所の第十四番である。



 水澤観世音は飛鳥時代に創建され、高麗の高僧恵灌僧正の開基であり、「五徳山 水澤寺」の名称は推古天皇の御宸筆の額名による。
「五徳山」と、水の徳をたたえる山号の由来は、水澤山から湧き出る清冽な水が豊かに流れこんでいるからだ。

 五徳とは、

  一、「常に己れの進路を求めてやまざるは水なり」
  二、「自ら活動しで他を動かすは水なり」
  三、「盛害に逢ってその勢力を倍加するのは水なり」
  四、「自ら潔くして他の汚濁を洗い而して、清濁併せいるは水なり」
  五、「洋々として大海を充し、発しては雲となり雨と変じ凍っては玲瑞たる
     氷雪と化して、其の性を失わざるは水なり」

 の五つである。

 本堂(観音堂)の本尊は、国司高野辺家成公の三女「伊香保姫」の持仏の「十一面千手観世音菩薩」、霊験あらたかでとくに七難即滅、七福即生のご利益があるという。



 本堂右手には六角輪堂があり、この六地蔵を左廻りに三回廻して罪障消滅、後生善処を祈るのである。



 誰もいないのでわたしも、やってみた。

 鐘楼の鐘だが、一回百円で誰でも撞ける。
 ひさしぶりに撞いてみることにした。これには自信がある。小さい頃に、弘明寺観音の鐘をよく撞いたものだ。



 曳き縄を持ち一、二回小さく揺らしてから、「エーイッ!」と、反動を付けて思い切り後ろに引ききり、鐘にぶち当てる。
 衝撃に揺れた鐘から、凄まじい伸びのある重低音が辺り一面に轟いた。
 勢いでもう一度鐘を打ちそうになるのを、あわてて止める。
 余韻の重低音がなかなか引かないのに、満足の笑みを洩らす。

 地蔵クルクルと、ハリキリ鐘撞きで、すこし腹が減った。
 せっかくだ、田丸屋でうどんのもりでも食べていこう。





 水沢には十軒から十五軒ほどのうどん店があり朝は早めでだいたい九時から営業しているが、観光客目当てなので閉めるのも早い。
 水沢うどんは古くから水沢観音の参詣客に供されている。秋田の稲庭うどん、香川の讃岐うどんとならび、日本三大うどんのひとつに数えられる。



 このやや太めの麺の艶、イカ刺しを思わせる食感、味もいい。難は、ちと麺が長くて出汁に付けにくい。

 もうひとつ難があって、値段である。「高っけえー」と知っていても思わず言ってしまうのだ。一番高い銀行振込手数料と同じである。土地のひとはほとんど食べないという。

 この、財布の紐ゆるゆるのイチゲンの観光客目当ての値段はなんとかならんだろうか。大阪だったら長くは営業が続くまい。

「上げ底で少ない割にはバカ高いんとちゃうか。茶飯とか掻き揚げとかなちょっとはサービスせんかい!」

 大阪人は二度と来ないだろうなあ。



  →「水沢うどん」の記事はこちら
  →「讃岐うどん」の記事はこちら
  →「稲庭饂飩」の記事はこちら


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