<品川、ガード下のラーメン(2)>
駅から品達に向かうまでに、胸をはって腕組みしてふんぞり返ったラーメン店主たちと自慢のデカ叉焼をのっけたラーメンのポスターがベタベタとこれみよがしに貼ってあって、まずこれが気にいらなかった。「品達」とは「品川に集まった、ラーメンの奥義を極めた達人たち」をたぶん縮めた略だろうが、食べたひとたちからこそ「達人」と呼ばれるべきで、わたしにはなんとも抵抗がある。
そして、従業員の着服防止や品別の売上統計が容易など、店側にだけメリットがある券売機を使った販売形態が、どうにもわたしは性に合わない。注文した品が遅かったりして腹を立てても代金前払いした以上、店を飛び出るわけにはいかないのだ。
しかし、「ただの喰わず嫌いじゃないの」そうバッサリ斬られるのもいやだからとにかく行ってみるとする。
さて、第一軒目は並ばないですむことから「きび」という店を選んだ。まだ昼前なのにいくつかの店の前には五、六人が列をつくっていた。
券売機の前ですこしだけ悩み、看板メニューで一番安い七百円の「支那そば」の切符を購入して暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませ。どちらでもお好きな席にお座りください」と、まずは感じのいい接客である。
昼前で客は二組ばかりと空いているので、テーブル席を選んで座った。
それほど待たされずに支那そばが運ばれてきた。
あっさりした醤油味の東京ラーメンである。スープ、麺ともに幅広い年代層に受け入れられそうな一杯だ。嫌いな叉焼だが、一枚はそれほど苦労しないで食べられた。
一軒目のこのラーメンに達人ぶりは感じられないが、他の品達のラーメンの基準になるので点数評価をしてみるとする。接客と味をトータルして六十五点くらいか。
さて別な日、二軒目に選んだのは「旭川ラーメンSaijyo(さいじょう)」だ。
旭川ラーメンは札幌、函館にならんで北海道三大ラーメンのひとつである。わたしは北海道ラーメンが無条件に大好きで、そしてたいてい現地でも食べている。室蘭や上川のラーメンも美味しかった。
この店は函館でもないのに塩ラーメンが旨いらしいが、あえて北海道で食べ慣れている味噌ラーメンの切符を購入した。代金が八百五十円はちと高いのと、丼の半分くらいを隠すバカでかい叉焼がとにかく非常に気になる。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
カウンター席に冷水の入ったコップが既に置かれていた。まだ、店内はガラガラに空いているのに指定されるとは、ちょっとがっかりだ。
「あの・・・叉焼抜きでお願いします」
生まれて初めて言ってしまった。でも、お陰でデカ叉焼のくびきから逃れられたので肩から力が抜け、とても気分が楽になった。品達の他の店もこれで行こうと決めた。
叉焼がないせいか、間が抜けた景色の味噌ラーメンが到着。
旭川ラーメンの特徴であるアツい熱いスープをすこし啜る。
ついで縮れ麺を啜ると、スープの凝縮された旨味が熱いラードを引き連れてしっかり麺にしがみついてきていた。堪らず、ひと口、またひと口と啜り込む。ああ、やっぱり旨いなあ。
なぜか唐突に但馬の小京都、出石の蕎麦屋を思いだす。
出石そばは「生玉子」を使って食べるのが普通らしいが、使わなくても充分に美味しい。わたしは玉子を使わなかった。勘定する段になったら、使わなかった玉子の代金を差し引いてくれたのである。
前払のこの店の場合は無理だろうが、八百五十円という代金設定のなかにあの叉焼は百円くらい占めているのではないだろうか。
食べ終わって満足したのでまず点数的には八十五点だが、接客と叉焼で五点引いて、八十点としておこう。
人間ドックが近いので禁酒期間に入った。高血圧に禁物のラーメンもしばらく休み、次の品達はドック明けまでおあずけとしたい。
→「品川ガード下のラーメン(1)」の記事はこちら
→「出石皿そば」の記事はこちら
→「出石へ(1)」の記事はこちら
→「出石へ(2)」の記事はこちら
駅から品達に向かうまでに、胸をはって腕組みしてふんぞり返ったラーメン店主たちと自慢のデカ叉焼をのっけたラーメンのポスターがベタベタとこれみよがしに貼ってあって、まずこれが気にいらなかった。「品達」とは「品川に集まった、ラーメンの奥義を極めた達人たち」をたぶん縮めた略だろうが、食べたひとたちからこそ「達人」と呼ばれるべきで、わたしにはなんとも抵抗がある。
そして、従業員の着服防止や品別の売上統計が容易など、店側にだけメリットがある券売機を使った販売形態が、どうにもわたしは性に合わない。注文した品が遅かったりして腹を立てても代金前払いした以上、店を飛び出るわけにはいかないのだ。
しかし、「ただの喰わず嫌いじゃないの」そうバッサリ斬られるのもいやだからとにかく行ってみるとする。
さて、第一軒目は並ばないですむことから「きび」という店を選んだ。まだ昼前なのにいくつかの店の前には五、六人が列をつくっていた。
券売機の前ですこしだけ悩み、看板メニューで一番安い七百円の「支那そば」の切符を購入して暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませ。どちらでもお好きな席にお座りください」と、まずは感じのいい接客である。
昼前で客は二組ばかりと空いているので、テーブル席を選んで座った。
それほど待たされずに支那そばが運ばれてきた。
あっさりした醤油味の東京ラーメンである。スープ、麺ともに幅広い年代層に受け入れられそうな一杯だ。嫌いな叉焼だが、一枚はそれほど苦労しないで食べられた。
一軒目のこのラーメンに達人ぶりは感じられないが、他の品達のラーメンの基準になるので点数評価をしてみるとする。接客と味をトータルして六十五点くらいか。
さて別な日、二軒目に選んだのは「旭川ラーメンSaijyo(さいじょう)」だ。
旭川ラーメンは札幌、函館にならんで北海道三大ラーメンのひとつである。わたしは北海道ラーメンが無条件に大好きで、そしてたいてい現地でも食べている。室蘭や上川のラーメンも美味しかった。
この店は函館でもないのに塩ラーメンが旨いらしいが、あえて北海道で食べ慣れている味噌ラーメンの切符を購入した。代金が八百五十円はちと高いのと、丼の半分くらいを隠すバカでかい叉焼がとにかく非常に気になる。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
カウンター席に冷水の入ったコップが既に置かれていた。まだ、店内はガラガラに空いているのに指定されるとは、ちょっとがっかりだ。
「あの・・・叉焼抜きでお願いします」
生まれて初めて言ってしまった。でも、お陰でデカ叉焼のくびきから逃れられたので肩から力が抜け、とても気分が楽になった。品達の他の店もこれで行こうと決めた。
叉焼がないせいか、間が抜けた景色の味噌ラーメンが到着。
旭川ラーメンの特徴であるアツい熱いスープをすこし啜る。
ついで縮れ麺を啜ると、スープの凝縮された旨味が熱いラードを引き連れてしっかり麺にしがみついてきていた。堪らず、ひと口、またひと口と啜り込む。ああ、やっぱり旨いなあ。
なぜか唐突に但馬の小京都、出石の蕎麦屋を思いだす。
出石そばは「生玉子」を使って食べるのが普通らしいが、使わなくても充分に美味しい。わたしは玉子を使わなかった。勘定する段になったら、使わなかった玉子の代金を差し引いてくれたのである。
前払のこの店の場合は無理だろうが、八百五十円という代金設定のなかにあの叉焼は百円くらい占めているのではないだろうか。
食べ終わって満足したのでまず点数的には八十五点だが、接客と叉焼で五点引いて、八十点としておこう。
人間ドックが近いので禁酒期間に入った。高血圧に禁物のラーメンもしばらく休み、次の品達はドック明けまでおあずけとしたい。
→「品川ガード下のラーメン(1)」の記事はこちら
→「出石皿そば」の記事はこちら
→「出石へ(1)」の記事はこちら
→「出石へ(2)」の記事はこちら
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