温泉クンの旅日記

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冷やし中華

2006-07-29 | 旅エッセイ
  < 冷やし中華 >

 わたしのオフィスのあるビルの裏手には、車道を挟んでかなり広い公園がある。
この公園は、真ん中に広い芝生があり、午前中から夕方まで犬の散歩でにぎわって
いる。公園沿いの車道では、タクシーやトラックの運転手たちが昼食をとって仮眠
しているのをよくみかける。

 ビルの公園がわのエントランスに灰皿が設置してあり、オフィスが完全禁煙のた
めにわたしはそこでよくぼんやり公園をみながら煙草を吸う。
 萌黄色の若葉とつややかな新緑の木々に囲まれて、公園内の歩道に沿って紫がか
った紅のツツジの花が群れをなして咲いている。純白をちりばめた花群れもある。
五十メートルほどの長い花束のようなひと群れがあり、ジョギングするひとの頭が
花を隠して通るのでかなり高さがあるのがわかる。

 若葉を揺らして渡っていく風に尾長鳥が乗って、木々の間を滑空するように飛んでいる。暖かい今日は四月というのに、木洩れ陽に初夏の気配がただよっている。
 ああもう初夏だな・・・そろそろ冷やし中華が食べたくなる季節だ。



 冷やし中華という言葉を頭のなかで目いっぱいクルクル高速反芻しているうち
に、北海道で食べたあれを突然思い出した。

 その日、新カルルス温泉のペンション風の宿を朝八時に出発した。素泊まりで泊
まったので腹が減ったため早くでたのだ。カルルスからさらに奥にはいったので、
登別温泉までおりないと食べ物にありつけないのである。
 道央自動車道の樽前パーキングにて樽前そばで簡単に朝食をとり、ひとしきり
砂川サービスエリアまで突っ走ったところで、いつものように三百円のカットメロ
ンを堪能する。

 深川ジャンクションから深川留萌道にはいった。まだ途中までしか道路ができて
いないので、ほとんどの区間が無料である。

 留萌に向かうまえに北竜町に寄ってみることにした。ひまわり畑で特に有名なと
ころだ。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが出演した広大なひま
わり畑のシーンがでてくる名画「ひまわり」は大好きな映画のひとつである。十回
はみたものだ。だからひまわり畑に愛着があるのである。美瑛でも満開のひまわり
畑をみて少なからず感動を覚えたので、ぜひ一度北竜町へは行ってみたかったの
だ。



 途中にある温泉に立ち寄り湯をする。
 まずは、秩父別(ちっぷべつ)温泉「ちっぷ・ゆう&ゆ」という温泉施設、五百
円。泉質はナトリウム塩化物泉。
 次に、道をすこし戻って妹背牛(いもせうし)温泉「ペペル」という日帰り温
泉、五百円。泉質はナトリウム塩化物水素塩泉。
 湯上りに煙草を吸いながら時計をみると午後1時である。立て続けに汗を流した
ので腹が減った。ペペルのなかのレストランで食べることにした。

 笊蕎麦という心積もりだが、一応メニューをみてみると「冷やしぶっかけラーメ
ン」という文字が眼に飛び込んできて、そのままクチから注文として飛び出してし
まう。
 北海道の九月はもう肌寒いのだが、今日は日差しが強く暑かった。温泉二湯立て
続けにはいったせいもあり、「冷やし」と「ぶっかけ」にグラリとよろめいたので
ある。どうせ名前負けするようなラーメンだろうが、ラーメンも冷やし中華も好き
だからなんとか後悔することはないだろう。

 運ばれてきた「冷やしぶっかけラーメン」はどうしてどうして、これが意外と旨
かったので驚いた。札幌ラーメンのような腰のある縮れメン、上に紅しょうがや天
かすや削り節がのっているところに、お酢風味の和風だしをかけて食べる。食感と
味わいが絶妙で、忘れられないほど後を引く旨さである。こういうものに出会う
と、根が単純だから一日中機嫌がよくなってしまう。

 北竜町の枯れてしまった、ひまわり畑をざっとトボトボみまわってから、北竜温
泉「サンフラワーパーク北竜温泉」に立寄る。ここも五百円である。
 秩父別、妹背牛、北竜と三つの温泉は薄い黄色で泉質もよく似ているが、妹背牛
が一番よかった。露天も一番よい。秩父別は露天がなかった。
 わたしは北竜温泉の露天風呂にどっぷり浸かりながら、三湯をざっと振り返っ
た。

(・・・北竜のひまわり畑がすべて枯れていたのは残念だが、札幌あたりからの距
離感もわかったし、土地勘もできた。季節を選んでまたくればいい。そうそう、あ
の冷やしぶっかけラーメンも食べられるしな)
 再訪決意の目的がひまわり畑だか「それ」だかあまり判然としないが、ひどく機
嫌がいいのであった。

 苫前の海に落ちる夕陽の時間に間に合うように、北竜をあとにするとまっすぐ
留萌方面に向かった。

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