温泉クンの旅日記

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遥かなる知床、ウトロ温泉へ(1)

2020-01-19 | 温泉エッセイ
  <遥かなる知床、ウトロ温泉へ(1)>

 知床半島の「知床(しれとこ)」という名前の由来はアイヌ語の「シリエトク(大地の果て、突き出たところ)」、その名の通り北海道の果ての東北端から北北東に向かってホーツク海に突き出た半島である。

 

 世界遺産である知床半島の、ウトロ温泉に行くには二通りの経路がある。
 ひとつはいわゆる裏側の東から攻める方法で、根室海峡に面した羅臼町を目指す経路である。知床は、羅臼町とウトロがある斜里町が共有しているのだ。
 かつて羅臼(らうす)の一帯はアイヌの狩猟地であったそうで、町の名もアイヌ語「ラウシ(獣の骨のある所)」から転訛したという。

 

 羅臼は人口約五千人の漁業の町で、知床の豊かな海の恵みである鮭(時鮭、鮭児、秋鮭)、イカ、鱈、キンキ、ホッケ、ウニ、昆布などを獲る。

 

<羅臼昆布>は、高級ブランドとしてつとに有名である。
 江戸のころ昆布は北前船西回り航路で天下の台所大坂まで運ばれて、真昆布・利尻・羅臼などの上物はもっぱら京大阪で消費され、格下の手ごろな値段の日高昆布が江戸に流通したそうだ。

 

 港には、ホエールウォッチング&バードウォッチングの観光船乗り場があった。夏はシャチやマッコウクジラ、冬は流氷の上のオジロワシやオオワシをクルーズ船からみられる。「日の出出港」と看板があるので、夏も冬も早朝の出港のようである。

 

 羅臼には秘湯が二つある。ひとつは、港から知床岬に向かって20キロほど走ったところの海岸にある混浴露天風呂の瀬石(セセキ)温泉で、満潮時には海に没してしまうため干潮時にしか入れない。ドラマ「北の国から 2002遺言」で、純(吉岡秀隆)と結(内田有紀)の義父のトド(唐十郎)が入浴した野天風呂の場面に使われたことで知られるようになった。

 もうひとつは知床横断道路を走り始めて5キロほどいったところ、道路のすぐ左手に秘湯として知られる混浴露天風呂「熊の湯」がある。町に近いのと、旅番組なので紹介されたのでこちらのほうが利用客は多い。
 いずれも無料なのだが利用者は志程度の入浴料を支払っているようだ。
 わたしがふた昔ほど前に日帰り入浴した羅臼温泉のホテルは、潰れて無残な廃墟となっていた。羅臼は観光だけとか通過するだけで宿泊する観光客が極めて少ないのである。

 羅臼からウトロへ行くには横断道路を使い、九十九(つづら)折りの知床峠をぐんぐんと昇っていく。

 

(まるで陸のような大きな島だ・・・)
 車窓から、国境でもある根室海峡を挟んでその向こうに、北方領土の国後島が驚くほど近くにみえて思わず車を止めてしまった。羅臼から国後島までは約五十数キロの距離しかない。そう、いま目の前に見ているのはまぎれもないロシアの領土なのだ。
「♪飲んで騒いで 丘にのぼれば はるか国後に 白夜は明ける」
 つい知床旅情の一節を口ずさんでしまう。

 

 知床峠の頂上は標高738メートルである。

 

 晴れていれば目の前に羅臼岳(1661メートル)が聳え立つ絶好の展望ポイントだ。しかし、山というものは気まぐれでなかなかスンナリ姿を見せてはくれないものだ。

 
 
 知床連山、そして広がるハイマツの樹海である。

 

 知床は全域がヒグマの生息地だ。エゾシカや狐、エゾリス、オジロワシ、オオワシ、シマフクロウもそうで、この知床横断道路ではかなりの確率で遭遇する。わたしもこの日エゾシカをみたが、もしも野生動物に出逢ったら、餌を与えない、車から降りないことが肝要である。

 

 ウトロへ降りていく途中で振り返ると、運よく羅臼岳がさきほどよりは綺麗に見えた。
 ただ残念なことにこの知床横断道路(国道334号)は、冬季に長期間(10月下旬から4月下旬)閉鎖されてしまう。

 ウトロへの正攻法は、網走方面からオホーツク海を左手にみて海岸線の道である。
 オシンコシンの滝の駐車場を右手にみたら、ウトロへは残すところたったの7キロ、すぐそこである。10分とかからない。

 

 さてと、本日の宿である「ホテル知床」に到着した。ふうむ・・・薄れてしまった記憶にあるものよりずっと新しく立派な建物だった。
 記憶というものは不思議である。はるか昔のことなのに、このホテルの露天風呂と、バイキングの夕食の途中で煙草が吸いたくなり、レストランを出たところにある喫煙スペースで聞いた館内に流されていた音楽が、プロコルム・ハルムの「青い影」だったことを鮮明に覚えている。なんだ欠片じゃないか、と言われればそれ迄だけど。

 

   ― 続く ―


    →「ライダーの謎」の記事はこちら


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